これは確かに撮影技術、演出が山椒大夫とは違う。演者の動きがダイナミックだし、馬上の女性がチラリと見えた瞬間をよく捉えている。なかなかこう上手くゆくものではないだろう。また赤子の泣き声もアフレコにしてはしゃっくりが上手く合っているし、編集技術も素晴らしい。まあ欠点としてはオリエンタル風のボレロが使われたのが気になる程度である。
さて事件についてだが、取り調べの際の供述が二つ、死者の供述が一つ、目撃者が偽りなく供述したものが一つ出てきて、真実はどれかという話になる。映画では結局藪の中ということになるらしい。
今の裁判でも裁判官には事件の真相はわからない。被告席にいる人間か、神様しかわからないのである。原告、被告の供述の中間ということではないだろう。意外と一番情けないプロットが真相なのかもしれない。