某年某月取材班は城戸真亜子とともにベトナムのダラットに入る。ダラットはホーチミン市から車で6時間、ランビアン山(2163m)の麓の高原である。フランス統治時代に避暑地として作られたこの都市には、人造湖と瀟洒なホテル、街にはカフェもありフランスパンが売られている。花の栽培も盛んで薔薇、アンセリウム、西洋ツツジが店頭に並んでいる。
始まりは1922年、フランス領インドシナ連邦政府がここにランビアンパレスホテルを建設したことが発端となる。関与した人物としてアレキサンドル・イエルサン(1863〜1943)がいる。彼はパスツールの弟子であり、ベトナムにパスツール研究所を作った人物である。研究のためダラットを訪れたイエルサンはここを避暑地にすることを政府に提言する。ホテルが完成すると、サイゴンのフランス人豪商たちがやってきて、ジャングルで狩を楽しんだという。その後鉄道ができると別荘が建ち始める。
第18代総督ジャン・ドクー(1883〜1963)の豪奢な別荘が残っている。フランス式庭園の薔薇が美しい。城戸真亜子はここを訪れ、この庭園を水彩画に書き写している。ここから6km離れたところにダティエン湖があり、フラワーガーデンもある。
街から南に10kmのところにプレーン滝がある。雄大で癒しもあるという日本には無いような滝である。ティエンラン湖の東に広がる森にには遊覧ボートで行く。かつての狩猟エリアに到着すると象に乗って遊んだ。
この後、ホテルの洋食をレポートし、夜店を楽しむ。1930年代の華やかな社交について資料を交えて述べられる。グエン朝第13代皇帝バオダイ(1913〜97)の足跡が紹介される。バオダイの別荘、グエン朝の王宮、墳墓も紹介される。1945年ホーチミン率いる革命勢力が蜂起してグエン朝を倒すまでその栄華は続いた。
城戸真亜子はアオザイを試着、刺繍を取材した後、ダラット市場でイカを食べる。次に観光列車でガー村を訪れる。この村で織物を見学し、子供と遊ぶ。先住民族のラット村に入り、民族音楽、歓迎の儀式を体験する。ダラット大聖堂、イギリス人の別荘、女性建築家の家、芸術家サロンを訪れる。以上ダラットについてかなり踏み込んだ取材だったと思う。日本の避暑地よりも格が上なのではと思った。