ラブクラフト全集第4巻 (2)

故アーサー・ジャスミンとその家系に関する事実 (1920)

 事件は5世代に渡る長い物語だが、ずいぶん短編の小説にまとめられている。その概要はこの文に集約される。

『老齢に達したロバートは、祖父(ウェイド卿)と自分が調査した地域に近いオンガ部族の伝説を蒐集して、奇怪な混血生物が棲むという、失われた都市についてのウェイド卿の突拍子もない話に、何らかの説明がつけられることを期待していたのだった。(大瀧啓裕訳一部補足)』

 ロバートの孫にあたるアーサー・ジャーミンはハーバードを主席で卒業し、熱心にロバートらが蒐集した遺物について研究し、コンゴでの現地調査も行い成果が期待されていたが、ついに情報を得て伝説の女神(ミイラ)がベルギー商人の許からジャーミン邸に届けられた。

 この後に起こった悲劇については冒頭に書かれていた通りである。するとつまるところ伝説に出てくる白い類人猿のことは不明であるが、白い女神はウェイド卿の妻だったと推測される。そしてその子孫は原住民によると奇怪な混血動物として言い伝えてられていたのだった。果たしてアーサーはどういう気持だったのか。思ってもいなかった結末なのだろう。もしこれが発表されればジャーミン家にとって著しく不名誉なことと考えたのかもしれない。

冷気 (1926)

 今回の語り口、内容は普通のスリラー物に近いが、この作者らしく死者蘇生の秘術のようなものが出てくるし、恐怖を与えるためのビジュアル、臭気などはこれまでの作品を踏襲したものになっている。また物理と化学の知識がこの物語の要であり、作者の得意とする領域だろう。

 物語は主人公の新たな引っ越し先のアパートの階上に住む、奇妙な博士の日常から最後までを題材としているが、博士はすでに死んでいたというオチにはちょっと無理があるのではと思った。奇妙な病気の方がまだ良かった気がする。