アレクサンドロス大王東征記(2)

 第一巻では遠征を開始して小アジアまで侵攻し各都市を制圧してゆく。第二巻ではいよいよイッソスの合戦が始まりダレイオスを敗走させる。ここにも注目すべき記述があったので引用する。

『ところでアレクサンドロスはダレイオスの母親や妃、あるいは子供たちの上にも、心を配らなかったわけではない。アレクサンドロスの事績を記録したうちの幾人かが伝えるところによると、彼はダレイオス追跡行から引き返してきた当夜、彼自身の用に取り分けられていたダレイオスの幕舎に入ると、その幕舎から程遠からぬあたりで、女たちの悲嘆の声や他にもそれに似た、取り乱した様子のざわめきを耳にした。いったいどんな女たちなのか、どうしてこんな近くの幕舎にいるのかと彼が訊ねると、誰かがこれも答えて言った。「王よ、あれはダレイオスの母御とお妃とそれにお子たちです。あなたがダレイオスの弓と王者のマントを持っておられると聞かされ、それにダレイオスの盾も持ち帰られたと聞かされて、亡くなったダレイオスのことを嘆き悲しんでおられるのです。」

    アレクサンドロスはこれを聞くと、彼女たちのもとにレオンナトスというヘタイロイのひとりを遣わして、ダレイオスはまだ存命であること、また武器とマントは彼が落ちのびる途中、戦車に遺棄していったもので、自分として得たものはこうした遺留品だけであることを伝えさせた。レオンナトスは 幕舎に入って行き、ダレイオスについても情報を伝えるとともに、アレクサンドロスとしては彼女たちが王族たるに相応しくかしずかれ、他の点でも王族としての尊厳を保ち、女王の尊称を以って遇せられることを認めるものだと伝えた。彼がダレイオスにたいして戦を起こしたのは、何も個人的な敵意からではなく、正当な権利に立ってアジアの支配権を争うためなのだから、というのがその理由であった。』

 さらっと書かれているけれど、これは目から鱗レベルの話だ。