フォークナー 八月の光 (9)

捜査を担当する保安官は偏見に満ちた無能な保安官というわけでもなく、そこそこ有能なようである。近郊にある黒人教会に現れたクリスマスを、犬を使って追いかける。だが靴を農民と交換していたクリスマスはまんまと追っ手を巻き逃亡生活の後、ゆうゆうとモッタウンの町に現れたのである。事件の噂を知る住民は騒然となり、保安官によりクリスマスは留置場に入れられる。

モッタウンの外れに住む謎の老夫婦の事が語られる。この老夫婦がクリスマスが護送されたジェファスンに現れて、ハイタワー牧師の前で告解するのである。この老夫婦の孫がクリスマスということになる。サーカス一座のメキシコ人と娘の間にできた子がクリスマスで、これでストーリーが全部繋がった。

さてこのあとどうなるのか、偏見と因習に満ちた南部ならではの結末が待っているのか、それとも作者の匙加減でいくばくかの変化が加えられるのか、結末はこれから読む人の為に伏せておきます。

楽しい音楽鑑賞

写真を見ていただくとわかるように、稼働しているのはHMAー9500 II のパワーアンプと、Dualgate MOS のプリアンプである。カートリッジはVictorのMCー L1000 になっている。これでMountain DanceのLPを聴いている。

これでずっと聴いていたいと思えるような深遠な音である。もっと早くこのプリがあればと思うが、発想を得て試作したのが4年前、できたのは去年のことなのである。遠まわりであったけれどMCー L1000 の真価が発揮できて良かったと思う。

パワーアンプは作るのが大変だと思う。すでにヴィンテージとなったHMAー9500 II が手に入らなければ、写真にあるようなSiC MOS アンプを作るといいと思う。

フォークナー 八月の光 (8)

バイロン・バンチについてはこのような記述がある。

《バンチが住む下宿のおかみのビアド夫人が知っていることといえば、土曜日ごとに六時すこし過ぎるとバンチがはいってきてバスを浴び、いまは古びてきた安サージの服に着かえる、夕食を食べ、家の裏に行ってバンチ自身が作り直して屋根もふいた小屋に飼ってある騾馬へ鞍をつけ、それに乗って出かけてゆくーー彼女の知っているのはそれだけなのだ。彼がどこへゆくのか彼女は知らない。バンチは三十マイルも田舎へ乗っていって、次の日曜には一日じゅう礼拝の続く田舎教会で合唱隊を指揮して過ごすのだが、それを知っているのは牧師ハイタワーだけなのである。それから真夜中ごろに彼はふたたび騾馬に鞍をおき、ひと晩じゅうゆっくりゆられてジェファスンへ戻る。そして月曜日の朝にサイレンが鳴るときには、洗ってさっぱりした仕事着とワイシャツで工場へ出ているのだ。(略)ハイタワーだけが彼はどこへ行き、そこで何をするのか知っている、というのは一週に二晩か三晩彼は、ひとり住まいの小さな家にハイタワーを訪ねるからでーーそれは町が、彼の恥の印と呼ぶ家であって、ペンキは塗られていず、小さく、みすぼらしく、薄暗く、男やもめの臭気と澱みをみせた家だ。ここで彼ら二人は牧師の書斎に坐り、静かに話すーー同僚たちにはまったく妙な人間と思われているのをまるで気づかぬ痩せた平凡な顔の男と、そして自分の教会から拒否された五十歳の失格者の二人が。》

バイロンはリーナに出産させ、自分と一緒に暮らそうとしているのだ。どうせブラウンは逃げて行くに違いないからである。この事をハイタワーに相談すると、ハイタワーはリーナはアラバマへ帰るべきだと言う。さすがは聖職者である。真理を指し示している。バイロンの方は何かに目がくらんでいるか、あるいは自ら悪魔の指し示す方へ行こうとしているのである。

フォークナー 八月の光 (7)

バーデン女史とジョー・クリスマスの関係は一風変わっている。奔放な性的関係が過ぎ去った後、バーデン女史はクリスマスを大学に行かせ、自分の事業の後継者にしようとする。相手の意向もお構いなく有無を言わさないやり方は、当然ながらクリスマスに最大限の反発をもたらすだろう。不可解なのはクリスマスがふらっと旅立てば済んだはずなのにそうしなかったことである。何が起こったかあまり具体的に書くとこのあと読もうとする人に悪いのでこの位にする。

田舎町で起こった猟奇殺人事件には多くの野次馬が集まり、保安官、二匹の犬と応援隊が投入され、物的証拠の拳銃も発見された。犯人を逮捕したものには親族より1000ドルの懸賞金が出されると噂される。真相をだいたい知っているブラウンは懸賞金を貰う気満々である。

捜査の様子を紹介する。

《「白人か?」

保安官が尋ねた。

「そうですとも。ホールの中をよたよた歩きまわってやしたよ。たったいま階段から転げ落ちたみてえに、あたしが二階に行こうとしたら邪魔しましてね。二階にいってみたら誰もいなかったて言うんでさ。でも上がって、降りてみたらもうそいつはいなくなってやした。」

保安官は二人を見まわした。「その小屋には誰が住んでたんだ?」

「誰がいたか分かりません」助手が答えた。

「たぶん黒ん坊でしょうね。聞いたところだと、彼女は自分の家に黒ん坊たちを住まわせていたようですよ。だから彼女がいままでやられなかったのは、不思議なくらいでさあ」

「黒ん坊を連れてこい」保安官が言った。》

 

 

東洋文庫 白凡逸志 金九自叙伝 (1947)

本書は 亡命中の金九が上海と重慶で執筆した自叙伝である。当時金九は大韓民国臨時政府主席であったという。このような記述がある。

《安進士は、海州府中に十余代もつづいた旧家の出だった。進士の父の仁寿は、鎮海県(慶尚道)の県監(長官)を勤めたが、そのご世の中が騒がしくなってくるのをみて隠遁の志を抱き、膨大な財産を貧しい一族に分けてやったすえ、約三百石の小作料収入のある財産のみをの押して清渓洞に入り住んだ。山川が秀麗なのと、乱を避けるのに適当であることから、この土地を選んだのだった。このとき仁寿の長孫の重根は二歳だった。

安進士は、科挙を受けるためにソウルの金宗漢(1844ー? 李朝末年の文臣)の門客となって長らく都に留まっていたが、進士になると官職につく志をすてて家に帰り、兄弟六人して酒と詩に歳月を過ごし、志のある友と交わるのを楽しみとしていた。 (略) そのころ安進士の長男の重根は十三歳で、ちょんまげを結っていたが、頭を紫の布できちっとしばり、トムパン銃という短銃をかついで毎日狩猟に日を過ごしており、見るからに英気勃々としていた。清渓洞の兵士のなかでも射撃術は抜群で、獣でも鳥でも狙った獲物は逃したとがないというので有名だった。》

このような記述がある。

《さて七月のあるひどく暑い日のこと、突然、囚人全部が教誨室に召集されたので、わたしも行って坐った。やがて分監長の倭奴が、一同に向かって、 「五十五号!」 と呼ぶのだった。 私は、返事をした。すぐに起立して出てこいということなので、壇の上に上がっていった。すると「仮出獄で釈放する」との宣言がなされた。集まっている囚人たちに向かって礼をし、すぐ看守に連れられて事務室に行くと、服を一着出してくれた。》

《数日後、邑内の李仁培の家で、わたしのために慰労宴が張られ、妓生を呼んで歌や踊りをさせた。ところが宴会の途中で、わたしは母上に呼び出され、 「わたしが何年も苦労したのは、きょうまえが妓生を侍らせて酒を飲むのを見るためではなかったのだよ」 と、おこごとをくった。わたしを宴会の席から呼び出したのは、わたしの妻が母上に告発したためだった。》

真面目な本なのか冗談なのか、まあ饒舌で真実味に乏しい文章であることは確かである。

フォークナー 八月の光 (6)

ジョーの逃亡生活のあらましが語られる。そしてジェファーソンにやって来たジョーはバーデン屋敷に住むバーデン女史を見出すのである。独特の嗅覚で年上の女性に接近し取り入るのが得意のようだ。イタリア系に見られるジョーはアルパチーノのような色男と想像する。

ジョーは離れの小屋に住み、母屋の台所に出入りするようになる。そのうち製板工場で働きはじめ婦人の情夫になった。

バーデン女史の生い立ちが評伝のように詳しく語られる。祖父はキャルヴィン・バーデンといい家出後カトリックの僧院で一年修行し、ユグノー教徒の娘と結婚する。父はこう言った。

「このことを覚えておきな。おまえのおじいと兄がここに埋められているのだ、殺されてな、だがそれは一人の白人にではなくて呪いによってなのだーー神様がおまえのおじいや兄やわたしやおまえのことを考えるよりもずっと前に、一つの人種すべてに与えた呪いによってな。その罪のために白人種の宿業と呪いの一部になって、いつまでも永久的に呪われる運命の人種なのだ。それを忘れるでないぞ。(略)生まれてきたものもこれから生まれてくるものも、白人の子供たちすべてには、この呪いがかかっておるのだ。誰もそれから逃れることはできないのだ」

このような二人の会話がある。

「あんたは自分の両親が誰なのか、まるで見当つかないの?」

「ああ、二人のうちの片方が黒ん坊だということ以外にはな。前にも話したとおりさ。」

まあこの辺りがこの小説の核心ではないだろうか。

GaN FETアンプ

絶対壊れないSic MOSの調整中。

今日はGaN FET を二個壊してしまった。

バイアス遅延回路、過電流保護回路、サーミスタ手動予熱を以ってしても±50V電源ではエネルギーが大きいのか起動に失敗した。保護回路が作動して終段石が一個壊れる。もうリファレンスはSic MOSで良いか。ここ最近はSic MOSのシステムで聴いているのでだいぶ耳が慣れてきた。またNUTUBEのプリよりもDual gate MOSのプリの方が優れていることも分かった。