東洋文庫

東洋文庫 白凡逸志 金九自叙伝 (1947)

本書は 亡命中の金九が上海と重慶で執筆した自叙伝である。当時金九は大韓民国臨時政府主席であったという。このような記述がある。 《安進士は、海州府中に十余代もつづいた旧家の出だった。進士の父の仁寿は、鎮海県(慶尚道)の県監(長官)を勤めたが、…

東洋文庫 日本お伽集 1 (1920)

小説風なので文章を例示する。大変素朴で面白い。 浦島太郎 《二、三日たってから、浦島は舟に乗って海に出かけました。遠い沖へこぎ出して、一心におさかなを釣っていますと、後ろの方で、 「浦島さん、浦島さん。」 と呼ぶこえがします。「おや、誰だろう…

東洋文庫 朝鮮独立運動の血史 1 (1920)

東学党の乱についての記述がある。 《こうして、わずかな間に、京畿、江原、黄海、慶尚の諸道に蔓延し、その勢は燎原の火のようであった。全州域を攻略した時、「ソウルに兵をすすめ、君側の奸を除こう」と声明した。 朝廷は、おどろきおそれ、清国に救援を…

東洋文庫 沖縄童謡集 (1934)

本書は那覇市立高女の生徒たちが課題として夏季休暇に蒐集した郷土の童謡を先生が整理編集したものである。一部を紹介する。 《37 烏 其の二 イエー、がらさー まーかいが。 わつたーあんまー(阿母) みーめー(見舞)しいが。》 《51 蜻蛉 其の1 ざーちが…

東洋文庫 修験道史研究(1942、1972)

本書は和歌森太郎の卒業論文に数編を加えて昭和十七年に河出書房より刊行されたものの復刻である。一部を紹介する。 10P 《はじめ、漠然と、修験道及びその主体たる山臥のことを歴史的に考究しようと志したさいに、思い浮かべた山臥は、第一に述べたような山…

東洋文庫 耳袋 1(1814年頃)

南町奉行の旗本根岸鎮衛が書きためた雑話集で全十巻あり、東洋文庫には二冊に分けて収められている。本文の一部を紹介する。 《盲人かたり事いたす事 安永九年の事なりしが、浅草辺とや、年若の武家、僕従三人召連れ通りしに、一人の盲人向こうより来たり、…

東洋文庫 近世畸人伝 (1790)

短い伝記のようなものや説話のようなものが混在している。一部を紹介する。 《内藤平左衛門 関東のならひ、貧民、子あまたあるものは後に産せる子を殺す。是を間曳といひならひて、敢えて惨ことをしらず。貧凍餓に及ばざるものすら、倣ひて此事をなせり。官…

東洋文庫 日本の茶書 1 (1971)

林屋辰三郎氏による「茶書の歴史」の章より内容を紹介する。 茶の起源において特に重要なのは、唐の時代(760年ごろ)に書かれた陸羽による『茶経』 三巻と、遣唐使として35年間唐に滞在した僧の永忠である。 《さて唐の風俗は、すべてが王朝人のあこがれで…

東洋文庫 国文学全史 1 (1905)

著者の藤岡作太郎は緒言でこのように述べている。 《本篇は、数年前、文科大学において講じたる国文学史をもととして、これを簡明に叙し、更に一二節を加えたるものなり。夏冬の休暇毎に、逗子に、能州和倉に、豆州伊東に、材料を携えゆきて筆を執り、最後に…

東洋文庫 騎馬民族史 1

これに出てくるどの民族も似たり寄ったりの生活様式、風俗を持つ。もちろん匈奴などは典型的なそれを有している。今回は渤海国に関係ありそうな靺鞨について読んでおこう。 《隋書靺鞨伝 靺鞨は高麗(高句麗)の北に在り、邑落にはみな酋長がいるが、統括す…

東洋文庫 菅茶山と頼山陽 (1971)

《天明八年(1788)六月五日、菅茶山は厳島を見物するために、弟子の藤井暮庵や従弟の君直などを同伴して、備後国神辺の自宅を立ち、福山、尾道、西条などをへて、十日に広島に入ると、ただちに旧友頼春水をその研屋町の邸宅に訪れた。当時芸藩に仕える儒官…

東洋文庫 朝鮮歳時記 (1911)

本文を一部紹介する。 《正月 元日 新歳問安 議政大臣は百官をひきいて宮中に参内し、国王に新歳の問安(あいさつ)をなし、箋文(国王にささげる賀表)と表裏(手織りの絹布や綿布)を献上し、正殿の庭で朝賀礼をおこなう。 八道の観察使、兵使および水使、…

東洋文庫 洋楽事始 (1884)

本書は音楽取調掛の報告書『音楽取調成績申報書』の現代語訳であり、後半には小学唱歌集の楽譜が91曲収載されている。明治五年の学制開始に続いて明治十二年に着手されたこの取り組みは世界に類を見ないものである。 本文を読むと、このような構想が描かれて…

東洋文庫 大津事件日誌 (1931)

本書は、大津事件の中心人物である 当時の大審院長児島惟謙が自らまとめた手記を覆刻したものである。解説文は家永三郎氏による。 児島大審院長の考えを示すこのような記述がある。 《上下一般が、かくして津田三蔵の白刃に其神経系を刺激せらるるや、其狂症…

東洋文庫 金文の世界 (1971)

金文とは簡単に言うと青銅器に鋳造された文字のことで、殷代末期から出土が確認されている。本書は白川静(1910ー2006)による書き下ろし作品である。 読んでみるとまるで新書のような内容であり、コンパクトながら密度が濃すぎて読むのに難渋する。例えばこ…

東洋文庫 江戸小噺集 1

読んでいくと冒頭からかなり毒が利いている感じがする。本文を少し紹介する。 《ぢゞとばゞ ぢいは山へ柴かりに、婆は内で洗濯も何もせずにゐたれば、程なくぢゞが帰り来たを見れば、廿四五の男になって帰た。婆肝をつぶし 「こなた、どふして其様に若くなら…

東洋文庫 日本神話の研究 (1931)

著者の松本信広氏は、記述が残っている日本の神話と各地に現存する伝承、祭儀、信仰を調べることによって一つの研究を成そうとした。この著書は『フランス学会叢書』に上梓されている。 まず最初に「外者款待伝説考」という章を設け、富士山と筑波山の言い伝…

東洋文庫 東学史 (1940)

著者の呉知泳についてはほとんど知られていないが教団内部の人のようである。本文より一部を紹介する。 《道 ーーー そのはじまり 今を去ること百年前、甲申の年〔1824年〕10月28日、朝鮮慶州の地に、宇宙を開闢させるという一大人物が誕生した。その人こそ…

東洋文庫 青木周蔵自伝

青木周蔵は長州藩出身のいわゆる平民であり自己の教育環境に腐心した様子が書かれている。 《橋下氏は偶然、予に語りて曰く、予の親戚に福沢諭吉なる者あり。今回、幕府より北米合衆国に派遣せらるる使節に随ひ、同国に赴くこととなりたるを以て、告別の為め…

東洋文庫 モンゴル秘史 1 (13世紀)

本書は那珂通世著『成吉思汗実録』を口語に訳し注解を多く加えたものである。『成吉思汗実録』とは明朝が漢訳編纂した『元朝秘史』の文語体訳である。さらに言うと13世紀にモンゴル帝国の宮廷に秘蔵されていた『秘史』というものがあって、それはモンゴル語…

東洋文庫 アンコール踏査行 (1880)

著者のルイ・ドラボルトはまず当時のカンボジアとフランスの関係について簡潔に述べている。以下引用文。 《カンボジアは、同じくこの大河にうるおされ、南はフランス領コーチシナと境を接する国で、これと合わせてアジアの端におけるフランス領の全体を形成…

東洋文庫 東都歳時記 1 (1838)

本書は斎藤月岑が著した江戸の歳時記である。東洋文庫には同じ著者で 『増訂 武江年表 (1848)』もある。本文を少し紹介する。 《元日 ◯御一門方譜代御大名衆御禮(装束にて卯半刻出仕)諸御役人方御禮登城。 ◯諸家年禮 商家にては二日より出る。元日は戸を…

東洋文庫 入唐求法巡礼行記 1(847)

本書は円仁(794〜864)が入唐した際の十年間の記録である。一部を紹介する。 《二 堀港より揚州に向かう 七月九日、巳時、海陵鎮大使劉勉来たりて遣唐使等を慰問す。酒餅を贈り、兼ねて音声を設く。相従える官健の親事は八人なり。其の劉勉は紫朝服を着し、…

東洋文庫 知恵の七柱 (1926)

序文を読んでいて気づいたが「アラビアのロレンス」はロレンスの親友が書いたもので、「知恵の七柱」はロレンスが書いたものなのだった。ロレンスはこの本のことを《自己中心的な写し絵》と表現している。 第一章から一部紹介する。 《私はこのようなアラブ…

東洋文庫 百済観音 (1926)

著者の濱田耕作は型破りな感じの考古学者で美術史の分野にも著作がある。本書は著者の専門分野ではあるが気楽な雑文を集めたものである。 著者は百済観音像を法隆寺金堂で見て、後に奈良博物館で見ている。 《〜そのヒョロ長い反り曲がった像が高く玉虫厨子…

東洋文庫 日本中世史 原勝郎著(1906)

明治時代の史学界において名著とされた本書は流麗な文語体で書かれている。通読するのはやはり大変なので一部分だけ抜粋して味わってみる事にする。 《保延元年海賊競ひ発こり、上下の船運将に絶えむとせしや、四月八日関白忠通の邸に於て征討に関して議する…

東洋文庫 マッテオ・リッチ伝 1(1969)

本書は東大教養学部出身の俊英平川祐弘氏による書下ろしである。豊富な資料の引用によって構成されているが、著者の叙述の部分が面白いので一部紹介する。 《20 マンダリン (略) シナ官吏(マンダリン)の特徴は科挙の制で選ばれた点に、世襲的封建制と異…

東洋文庫 夢酔独言 他 (1843)

著者の勝小吉(1802〜1850)は勝海舟の父にして宮本武蔵より凄い武士と言われている。さていったいどういう事なのか。本書に併録されている『平子竜先生遺事』を読んでみよう。 《二、或時又々平先生を尋ねしに、早速逢はれ、種々咄の間に、足下は学問は好み…

東洋文庫 増補山東民譚集 (1914)

このような本を書いた柳田邦男は「思う存分書きたい病」のような状態だったことが再販序の記述から伺える。 《斯んな文章は当世には無論通じないのみならず、明治以前にも決して御手本があったわけで無い。大げさな名を附けるならば苦悶時代(略)に、何とか…

東洋文庫 西学東漸記 (1909)

本書は容閎(1828ー1912)による自伝である。端的に言うとこのような人物である。 《しかし、なぜ両親が外国人の学校なぞへ私を入れる気になったのか、いまもって私には不可解だ。(略)男の子の一人に英語を習わせておけば、高級通訳になれる。あるいはもっ…