シルクロード第2部(7)バクダッドの彼方へ

最近はシルクロード、刑事コロンボ、シャーロックホームズの冒険と再放送が続いているのでうれしい。今回のシルクロード第2部(7)ではマルコポーロの旅程を辿っており、チグリス・ユーフラテス川下流の湿原マーシュランドを取材している。泥と葦で作った水…

フォークナー短編集 (18)

読了した。さて少年の目から見た事件のあらましを読者は知る事ができたのだが、事実関係についてはほぼこの通りだろう。 地主宅の納屋に放火したのは少年の父親のアブナー氏であり、オイルを用意して現場に向かったのを少年と家族が目撃している。動機はわり…

フォークナー 短編集 (17)

短編集最後の「納屋は燃える」まで来た。実に遅い読書だが何か書くためにはこのくらいの速度になってしまうのだ。さてフォークナーの小説にはドラマとして再現可能な部分とそうでない心理描写のような部分が混在している。 主人公の少年が町を追われて一家で…

フォークナー短編集 (16)

決闘が終わった後のサートリス家の様子が描かれる。牧場周辺の自然や、鳥の鳴き声のような描写がふんだんに出てくる。牧場の奥まったところにある低地の木陰で夜まで休息したベイアードとリンゴーはひっそりと静まり返った家に戻ると叔母のジェニーが待って…

フォークナー短編集 (15)

当日の朝となった。ベイアードはジェニー叔母さんの最後の懇願も聞かず、何とか助勢しようとするワイアットらの申し出も断り、ものすごい精神状態で弁護士B.J.レッドモンドの古びた事務所に乗り込んでいった。 結果は、書くとこれから読む人に申し訳ないの…

フォークナー短編集 (14)

さていよいよベイアードはジェファーソンにある実家にたどり着いた。 《私は馬からおりた。だれかがその馬をよそへひっぱっていった。私は彼女のところに近づいていった。だが、そのときの私の気持ちは、まるで私自身はまだ馬の背にまたがっていて、彼女がつ…

フォークナー短編集 (13)

このような場面だが会話にいやにリアリティーがある。 《すると彼女が口を開いた。「ベイアード、あたしに接吻してちょうだい」 「だめだよ。あなたはおやじの奥さんじゃないか」 「それに、あなたより八つも年上だし、それから、あなたの遠縁の従姉だわね。…

フォークナー短編集 (12)

事件といっても牧場で父が撃たれたという出来事である。撃った人物はわかっている。父とは「八月の光」でも出てきたあのサートリス大佐である。その瞬間からこの私はサートリス家の当主となり、仇討ちの為の決闘が待っているのだった。家までの40マイルの道…

フォークナー短編集 (11)

「バーベナの匂い」である。今度はすんなりと頭に入ってくる。文章が明晰そのものだからだろう。フォークナーにしては珍しく、人を小バカにしたような表現に出くわした。 《「なにか、わしにできることでもあったら」 「先生、ぼくの下男に新しい元気な馬を…

フォークナー短編集 (10)

残りの数ページを読んでみたら、思った以上の酷たらしい結末だった。サトペン大佐の態度にキレたワッシがサトペン大佐を殺す。この後のことに思いを巡らせたワッシは逃げることもままならぬと思い、全部終わらせる壊滅的行動をとる。その時の彼の思考を精読…

フォークナー短編集 (9)

「孫むすめ」まで来た。何だか読んでもちっとも頭に入って来ないので、部分的精読から入る。 《りっぱな容姿の種馬に乗って、農場を駆けめぐるのを見かけたものだった。その瞬間だけは、彼の心は平静になり、誇らしくもなった。つまり、彼にはこんなふうに思…

東洋文庫 日本神話伝説の研究 1 (1925)

長い総論があるがそれは読み飛ばして、各論のごく一部を精読する。 《七 素戔嗚尊の性質 高天原神話における素戔嗚尊は純然たる英雄神であるが、出雲神話においては、英雄神であるよりは、むしろ造化神であるように思われるところがある。伊弉諾伊弉冉二神の…

フォークナー短編集 (8)

いよいよ喜ばしくない場面が出るだろうと思って読み進むと、ミニー・クーパー嬢の生い立ちと近況が書かれていた。その後にはマクレンドンが帰宅して、自動拳銃をテーブルに置いたところで小説が終わった。マクレンドンは疲労困憊していたようだが、リンチし…

フォークナー短編集 (7)

いよいよ問題作「乾燥の九月」のところに来た。読んで行くと、この辺りの記述が問題の核心部分であるだろうとわかる。 《理髪師は剃刀をかざして、旅商人の顔をおさえつけていた。「まず事件の真相をつかむのが第一ですよ、みなさん。わたしはウィル・メイズ…

フォークナー短編集 (6)

日課であるフォークナーの読書をする。 この最後の場面では、ジェイソン、キャディーとナンシーの掛け合いが繰り広げられ、「私」は見ているだけである。だから一読目では、クウェンティンの目だけ存在するように感じたのだ。さてとうとう父親が迎えにやって…

フォークナー短編集 (5)

私(クウェンティン9歳)、キャディー(7歳)、ジェイソン(5歳)がナンシーの家まで夜道を行く。 《私たちは小道を下っていった。ナンシーは大声でしゃべっていた。 「ねえ、ナンシー、なんでそんな大きな声でしゃべっているの?」とキャディーはたずねた。…

フォークナー短編集 (4)

読み進んでゆくと「私」が場面に登場してちゃんと会話していた。 《「クウィンティンに、行って見てきてもらったらどうだい?」と父がいった。「おい、クウィンティン、ナンシーがもうすんだかどうか、行って見ておいで。もう家に帰ってもいいといってやるん…

フォークナー短編集(3)

『ある夕陽』まで来た。一読すると登場人物が交錯気味で、再読しなくてはならないようだ。殊に終わりの場面で出た「私たち」という言葉に引っかかる。私とは誰なのか。そんな人はいないような気がする。 冒頭の情景描写から熟読してみよう。 《しかし十五年…

フォークナー短編集(2)

『エミリーにバラを』 ジェファーソンに伝わる奇譚と言っていいのか、まあこれはエミリー・グリアソンの簡潔すぎる評伝である。彼女の葬儀から書き始められているが、彼女の一生は外から見ると社会に出ず引きこもって歳をとって死んだだけのように見える。表…

東洋文庫 中国革命の階級対立 1 (1930)

著者の鈴江言一は軍閥についてこのように述べている。 《軍閥の特質は、第一に、彼等が特に劣悪な素質の私兵を擁し、一定の勢力範囲を画定し、土地と住民に対する絶対的専制権を保持し、この専制政治のもとに、自由に課税ーー封建的軍事賦課の性質をもつーー…

フォークナー短編集(1)

新潮文庫版である。二つ目の『赤い葉』まで来た。情景描写があるので精読するために書き写しておく。 《午後早く、黒人は木のてっぺんから農園のなかを見おろしていた。イセティベハの遺体が、馬と犬がつながれている二本の立木のあいだにつるされたハンモッ…

東洋文庫 唐詩三百首 1(1973)

王維の五言古詩から紹介する。読み下し文を一部改変している。 〈送別〉 馬より下りて君に酒を飲ましむ 君に問う 何の之く所ぞと 君は言う 意を得ず 南山の陲に起臥せむと 但去れ 復問うこと莫けん 白雲 尽くる時無し 〈青谿〉 ここに黄花川に入るに つねに…

フォークナー 八月の光 (10)

読了した。事件は派手なアクション映画のような展開となって終結する。パーシー・グリムという25歳くらいの州兵が活躍した。老夫婦は検事に見送られて故郷に向かう汽車に乗る。ハイタワーは、最後の最後にこのいざこざに巻き込まれてしまうが、結局無事だっ…

フォークナー 八月の光 (9)

捜査を担当する保安官は偏見に満ちた無能な保安官というわけでもなく、そこそこ有能なようである。近郊にある黒人教会に現れたクリスマスを、犬を使って追いかける。だが靴を農民と交換していたクリスマスはまんまと追っ手を巻き逃亡生活の後、ゆうゆうとモ…

フォークナー 八月の光 (8)

バイロン・バンチについてはこのような記述がある。 《バンチが住む下宿のおかみのビアド夫人が知っていることといえば、土曜日ごとに六時すこし過ぎるとバンチがはいってきてバスを浴び、いまは古びてきた安サージの服に着かえる、夕食を食べ、家の裏に行っ…

フォークナー 八月の光 (7)

バーデン女史とジョー・クリスマスの関係は一風変わっている。奔放な性的関係が過ぎ去った後、バーデン女史はクリスマスを大学に行かせ、自分の事業の後継者にしようとする。相手の意向もお構いなく有無を言わさないやり方は、当然ながらクリスマスに最大限…

東洋文庫 白凡逸志 金九自叙伝 (1947)

本書は 亡命中の金九が上海と重慶で執筆した自叙伝である。当時金九は大韓民国臨時政府主席であったという。このような記述がある。 《安進士は、海州府中に十余代もつづいた旧家の出だった。進士の父の仁寿は、鎮海県(慶尚道)の県監(長官)を勤めたが、…

フォークナー 八月の光 (6)

ジョーの逃亡生活のあらましが語られる。そしてジェファーソンにやって来たジョーはバーデン屋敷に住むバーデン女史を見出すのである。独特の嗅覚で年上の女性に接近し取り入るのが得意のようだ。イタリア系に見られるジョーはアルパチーノのような色男と想…

フォークナー 八月の光 (5)

ジョー・マッケカン(クリスマス)の成長過程が描かれている。 《彼ら五人は夕暮れの中で、捨てられた製材小屋の近くにひっそり集まっていて、そのひしゃげた戸口から百ヤードほど離れたあたりに隠れて、見張りながら待っていると、黒人の娘がその戸口に近よ…

東洋文庫 日本お伽集 1 (1920)

小説風なので文章を例示する。大変素朴で面白い。 浦島太郎 《二、三日たってから、浦島は舟に乗って海に出かけました。遠い沖へこぎ出して、一心におさかなを釣っていますと、後ろの方で、 「浦島さん、浦島さん。」 と呼ぶこえがします。「おや、誰だろう…