映画
これは確かに撮影技術、演出が山椒大夫とは違う。演者の動きがダイナミックだし、馬上の女性がチラリと見えた瞬間をよく捉えている。なかなかこう上手くゆくものではないだろう。また赤子の泣き声もアフレコにしてはしゃっくりが上手く合っているし、編集技…
説話物語を平安絵巻風に再現した作品だが、映像も音楽も美しく、キャストも大変見栄えがするので、外国にも受け入れられやすいと思うし実際に高評価を得ている(ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞)。 テーマとして盗賊の跋扈、治外法権的な荘園、人身売買とい…
晩年の淀川長治氏は大好きな温泉とステーキを楽しみながら、映画の新作を見ることがライフスタイルであったという。能天気に思えるがやっぱり映画はいいと思う。 このバクダッド・カフェ、奇抜なオープニングだが、ドキュメンタリータッチで進行してゆく。カ…
伊豆の踊子のような実話的な話と思って見ていたら、さにあらず、福永武彦の創作という事である。作品中で廃市と言及される柳川市の音や風景が何だか幻想的で、舞台となる旧家もこの物語にふさわしい立派なものである。これまでにない音楽の使い方、映像の佇…
見終わった。大作である。まず実写で危険を顧みず頑張って撮ったのだなという印象がある。戦闘シーンで実際に落馬しているし、天守閣の炎上シーンも火の中で仲代達矢がぎりぎりの演技をしたという。だが人物のアップがなく表情も乏しいし、衣装もアイデアは…
黒澤映画『乱』を視聴中にふと思い立って『リア王』を視聴した。これは展開が急激で、端的に言って面白い作品である。殊更に悲劇的な結末も用意されている。これを見終わって(75分と短い)から『乱』の視聴に復帰したが、ストーリーとモチーフをいくつか踏…
一視聴者として時代背景やら製作者の事は考えずに観る事にした。時代劇映画の最高峰かなと一瞬思ったが、どうやらそうでは無いようだ。能のようなシンプルな舞台と短い符丁のような会話など独特の演出方法が採られている。冷徹な史実でゴリゴリ押すのではな…
映画コレクションよりもう一度見たい映画をセレクトして見ることにした。その第二回である。見たまま、感じたままを記して人生終わりである。余命宣告を受けた訳では無いが。 観た。 ハバロフスクに住んで、軍の隊長としてシベリア(沿海州)を探検し、熟練…
この映画が芸術映画らしく見えるのは、前振り、説明が一切なく始まることと、心象風景のような薄暗い映像、センスのいい構図、創造性のあるオリジナル音楽がかぶさるといった作り手の工夫が表れているからだろう。 監督の父親が麿赤兒というのも何か暗示的で…
メキシコにおいて猖獗を極める麻薬カルテルは米国に麻薬を運んで販売するだけでなく、米国内で移民たちを誘拐し惨殺する事件を起こしていた。これを取り締まるFBI捜査官はカルテル側の爆弾作戦で犠牲者を出す。これに対抗するため米国の当局は特別任務の部隊…
想田和弘監督のドキュメンタリー映画。意外性があるし、登場人物は素人ながら役者のような(例えば山﨑努のような)風格がある。観察対象は相変わらず弱者をクローズアップし、介護の現場である。岡山の街の風景や自然が巧みに取り入れられ、人情や空しさも…
山本医師のその後について知りたいと思う人は多いと思うが、本編はそのものズバリの密着型ドキュメンタリーである。前半では患者との別れ、送別会、後半では妻とのプライベートがフィルムに収められた。華道の先生が登場して知られざる妻の過去について語っ…
精神科クリニック、コーラル岡山を取材したドキュメンタリー。テレビとは違って、観察者がずいぶん対象に溶け込んでいる感じがする。監督兼カメラマンの想田和弘氏が患者に溶け込むのが上手なのだろう。診察風景から始まり、待合室、患者さん、ショートステ…
主人公のバートは拳銃を愛好しているが、生き物を撃ったりはしないブッダのような人物である。それがことの成り行きで銀行強盗を生業とするようになった。ブロンド美人の悪い女に捕まったからである。バート自身は慎ましく生きながら、拳銃を愛好するつもり…
田舎で一人暮らしをしていた78歳の老人ゲイリは住居ををたたんで都会に住む娘夫婦のアパートに身を寄せる。突然の訪問に驚く娘夫婦だが、結局ゲイリは老人ホームに送られることになる。そこで幼馴染のステラと再会した。 行雲流水の境地かと思いきや、今は廃…
長距離列車で都会の駅に降り立った初老の男、その夜はベンチで仮眠を取ることになる。そこへ3人組の男が現れ後ろから棍棒で殴り昏倒させる。金品のものを奪い、今度は瀕死になるまで棒で叩いて去って行った。男は病院に収容され命は助かったが記憶を失ってい…
ヨーロッパのある街、若くハンサムな警備員コイスティネンが登場し、仕事の夜勤を始める。その上司、同僚も絡んでくるが、淡々とストーリーは進行する。どうやらコイスティネンは起業してムカつく上司を見返してやるつもりらしい。 説明は一切ないのだが情報…
アイルランドコーク県におけるアイルランド独立運動の物語で、独立派組織と英国軍のやりとりが、かなりリアルに描かれている。残虐なシーンが多いが、映画なのでこれでも自粛しているはずである。隣に強大で悪辣な国が存在すればまあこんなもんだろうと思う…
ブルガリアの強制収容所から脱走したデビッドという少年が、母の居るデンマークまで辿り着けるかどうかという話。少年は母が生きているかどうかさえ知らないのだが、ギリシャ、イタリア、スイスと旅をしているうちに手助けもあり、遂に母と再会するに至る。 …
『ブルガリア17歳になりました』というドキュメンタリーと錯覚するような作りだが、実際は綿密な計算の元に俳優が演じている。 首都ソフィアに住むゲオルギは17歳の高校生だが、タバコを吸い、タトゥーを入れてネオナチグループとつるむようになる。兄のイツ…
ニュージーランド・米国制作映画。 悪い事を予想させる雰囲気で進んでゆく。米軍の作戦シーンはそれなりにリアルだし、敵がほとんど現れないのが気になるが、低予算なので致し方ないのだろう。通信を駆使して米中開戦に誘導する謎の男が描かれ、それを追うFB…
これは河竹黙阿弥作の歌舞伎、通称『髪結新三』を映画化したものである。新三という長屋の住人がいろいろな事をしでかし、大金をせしめた後ヤクザの親分に始末されるという暗い話である。 映画そのものは至って普通の時代劇であり、武士の上下関係、婚姻の強…
勝新太郎、高倉健主演の任侠風のドラマだが、主題は一攫千金を夢見る玄造(勝)が刑務所で知り合った錠吉(高倉)と共に、海底に沈むお宝を探すというものだ。一緒についてくる女(梶芽衣子)は吉原の女郎で、上吉の情婦だった女郎の妹である。この玄造が女…
東日本大震災後の一家族の物語だが、霊的に太平洋戦争と交わる部分もあり寓話めいている部分もある。 前世家族だった三人が福島の白河市に導かれる様にしてやってくる。これは凛という少女が仕組んだことで、そこには今はもう老齢の戦災孤児百合子が一人で住…
照屋年之監督のインタビュー記事を読んで、この短編映画を視聴した。建設会社社長の最期の病床を撮ったもので、ドキュメンタリーではなく、完全創作の作品だが、中々独創的で、制作もギリギリ上手くいっているという感じを受けた。 冒頭の一般人ぽい人の呟き…
勿論このような物語はE.T.とか古くから類似したものが製作されているわけだが、これもその一つでロンドンの一家族の元にペルーからしゃべるクマがやって来たという設定の新作である。 赤い帽子にトランクを持ち漂泊するキャラクターは寅さんから来ているとは…
冒頭からソウェト地区に潜入するエージェントが登場し、緊張感のある映像となっている。これがソウェト地区かという印象だ。ヨハネスブルグではテロが多発し、南ア当局はANC(アフリカ民族会議)との交渉を模索しているが、仲介しようとしているのはイギリス…
白人が作ったマンデラ賛美の映画であり、概念だけで作ったような不思議な作品だ。決してこれをドキュメンタリーと思ってはならない。 ケープタウンで弁護士事務所を開いて活躍しているマンデラは、元は村の首長の息子だったが今ではまるでニューヨークのセレ…
米国空軍の宇宙基地で猿を使った訓練の任務を行なっていたレオ大尉は探査ポッドで磁気嵐の探査中に操縦不能となり、ある惑星に不時着する。 ジャングルのような所に降り立ったレオが見たものは、戦国武将のような猿に追い回される原始人のような人間だった。…
三匹の猿の科学者が宇宙船で地球に到着する。テイラー大佐の帰還だと思って迎えに出た軍関係者は、ヘルメットを取った猿を見て唖然とする。期待と驚きの落差がシュールな笑いをもたらすのである。三匹の猿は動物園での事故で二匹になった。コーネリアスとジ…