岩波文庫
ほぼ毎日読んでは頭にすっと入るかどうかを基準に進んでいる。やっと静止系に対し速度vで運動している慣性系での剛体の長さlがどの様に短縮するか、その式を計測に使われる時計の定義と光速度不変の物理学的事実から導くところまでがわかってきた。ニュート…
今頃になって相対性理論を読んでいるのもおかしいが、この本で取り上げている論文は『動いている物体の電気力学』だけであるので何となく敷居が低そうだ。 運動学、力学だけの世界に電気・磁気が絡んでくると、ついには相対性理論まで行ってしまうのかと思う…
結局ユグルタの数々の不法行為がローマ人の怒りを買う事になり、両国は全面衝突する事になる。ローマ側からはメッテルス、次にマリウスという勇敢な将軍が送り込まれ、ユグルタを追い詰め、最後は捕獲する。攻略した町は多数で、機略に富んだ面白い戦闘も書…
ユグルタの査問の場面は何度読んでも面白い。少しだけ引用しておこう。 《このようにしてユグルタは王の威厳に反して、精一杯憐れみをそそる身なりで、カシウスとともにローマにやって来た。そして彼自身には大いに自信があったのではあるが、例のあの人全員…
ヌミダエ人の由来についてサルスティウスによる解説がある。かいつまんで言うと船でイベリア半島に渡ってきたペルシア人がアフリカに出て行き、現地人と混血しながら東進し、カルタゴと接するところまで来たのがヌミディア王国なのである。 さてその後どうな…
もう一人の息子アドヘルバルは属州に逃げ込んだのちローマへ向かった。一方ユグルタはというと。 《そこで数日の後、莫大な金銀を携えた使者たちをローマに派遣し、彼らに次のような指示を与えた。まず旧い友人たちを贈物で堪能させ、ついで新たな友を手に入…
いよいよ本題に入って行くのだが筆の勢いが凄かった。当事者しか知り得ないようなやりとり、一字一句写し取られたような演説、湧き上がる恐怖心などが描かれている。ユグルタ及び買収されたローマ側の高官たちは随分あくどいことをやったものだ。だがそうい…
《私が書こうとしているのは、ローマ人民がヌミダエ人たちの王ユグルタとの間に起こした戦争である。(略)》 この後は言うほど明快な文章でなかったので、少し要約してみる。 背景として、著者はローマにおける門閥貴族の悪行、第二次ポエニ戦争の戦後処理…
日本に生まれれば岩波文庫は小学生の頃から目にするだろうが、長いし読んでもわからないような本である。高校生くらいには読めるようになるだろうが、その頃はもう時間が割けなくなる。大学生の頃読めばよかったとは思うが、もっと読みやすい本多勝一や西村…
正直に冒頭に書いてしまったので、この後は手を替え品を替え同じような事を論述しているに過ぎない。比喩を用いたり、逆説風に論じたり、言葉を変えたり、時にはプラトンやデカルトを引用し、ある部分ではソフィストの言辞を批判しているように見えるのだが…
改めて冒頭の部分を読んでみる。(P67) 《「というのも、『存在する』という表現をつかう場合、じぶんたちがそもそもなにを意味しているのか、きみたちのほうがやはり、ずっとまえからよく知っているのはあきらかだからだ。私たちの側はどうかといえば、以…
方法論としての現象学を調べて行くとフッサールの主張は対象への接近度と観察者の直観を重視しているように見受けられる。データを取る対象を近代的視点から記述して行くと確かに失われれてしまうものが多くなる。人類学研究の理想は部族の一員になりきって…
P213 《哲学の根本問題である存在は、存在者がぞくするいかなる類でもないが、存在はそれでもなおそれぞれの存在者にかかわってっている。(略)存在とは端的に超越概念なのである。》 何か核心に触れた感じがする文章だが、言い切っているわりには言葉が足…
この表題からは科学論文みたいに2ページくらいにならないのかという疑問が湧いてくる。哲学は自然科学ではないのだろうか。今の私には考える時間は青天井くらいに存在する。まだ読む前だが、ハイデガーの主張は結局ソクラテスのメノンに戻るだけだったらがっ…
このような記述がある。 《二 シュルレアリスムにのめりこむ精神は、自分の幼年時代の最良の部分を、昂揚とともにふたたび生きる。それはなにか精神にとって、いましも溺死しようとしているときに、自分の生涯のすべてを、またたくまに思いおこしてしまうひ…
とうとうここにぶち当たってしまった。若い頃当然読んではいたし、当時世間でもエピステーメー、蓮實重彦、冷し中華思想などで賑わっていた。蓮實氏の御子息は作曲家である。僕もシュールレアリスム風の絵を描いたり、作詞もしていたが長い間社会に揉まれて…
天下国家を論じ、国のために官僚を志す若者なら『塩鉄論』と『ユートピア』くらいは読んでおくべきだろう。ただし『ユートピア』の方は皮肉が効いているので、読むと志望先が変わるかもしれない。 浮浪者然としたラファエル・ヒロスデイはこう語った。 《モ…
かなりローカルで稀少な歴史が綴られているのでここに記しておこう。(P159) 《アルタイの牧人と狩人は、ロシアの植民者によって絶え間なく、やせて不毛な土地へと追いやられた。一九〇〇年ごろ、シナで大衆が魔術にたけた義和団のまわりに結集したとき、同…
パリ生まれのエリート官吏で作家の、メリメによる短編集である。小説『カルメン』の作者である事はそれ程知られていないような気がする。本書は彼の異国趣味が前面に出ているような作品集で、中でも『タマンゴ』はそのまま映画になりそうな出来栄えである。…
著者のオットー・メンヒェン=ヘルフェンはウィーン生まれの民俗学者で1929年にトゥバ入りし、調査活動に励んでこの書をものにした。とても理知的な人物でその文章からそれが窺われる。 《トゥバ人はいかなる肥料も用いない。降水量はわずかだし、犂はあまり…
ゆっくり読んでいると面白い。このような記述がある(p75)。 《その上さらに、民衆を敵にまわしたならば、その数があまりにも多いために君主は身の安全を保ち得ないが、有力者たちならば、数は少ないから身の安全は保ち得る。民衆を敵にまわすことによって…
この書は序文にあるように、君主(メディチ家)に対する阿諛甘言を排したストレートな論文集であり、フィルドゥスィーの『王書』のようなものとは異なっている。非常に明快な文章なので少し紹介する。 《それゆえ言っておくがこの場合の政体、すなわち獲得の…
時間があるので巻末の注釈を読んだり、本文を読み返していると重要なポイントが浮かび上がってくる。 《ところで私は、これほどに重要不可欠な学問の探求に全生涯を当てようと企て、わたしの見出した道が、人生の短さと実験の不足とによって妨げられさえしな…
デンマークの実存主義哲学者キルケゴールの著作である。少し引用するとよくわかるが、死と絶望の語句をもてあそんでいるように見える。(p32) 《さてこの究極の意味において絶望は死に至る病である。ーー自己のうちなるこの病によって我々は永遠に死ななけ…
ルネ・デカルトは当時としては先進的なラ・フレーシュ学院で語学(ギリシャ語、ラテン語)、宗教学、人文(論理学、形而上学、自然学)、幾何学を学んでいる。そこで感じたものは古い学問を学び続けることの弊害であり、もう十分学んだと感じたデカルトは世…
パリ在住のジャーナリスト兼詩人のドーデーが、風光明媚なプロヴァンス地方の風車小屋を購入して冬の間はここに住むことにしたのである。移住初日の描写がある。 《不意を打たれたのは兎たちである!・・・・ ずっと前から風車小屋の戸が閉められて、壁も床…
オイディプスの死後、戦争が始まって二人の息子が相討ちになって死んだ。新しく王になったのはあのクレオンである。物語の発端はクレオンの出した命令である。攻めてきた方の息子のポリュネイケスの死体を埋葬せずに道端に放置し、これを埋葬したものは死刑…
コロノスとはアテネ郊外の森に隣接した地で、アテネ王テセウスの統治下にある。自ら盲目になりテーバイから追放されたオイディプス王は娘のアンティゴネに手を引かれて放浪の旅に出るが、最後の地コロノスの森にやってきた。このような会話がある。 《オイデ…
この劇の完全復元上演の試みは海外ではあるようだが映像媒体で入手できるものは無いようだ。岩波文庫のテキストからひたすら想像してゆくしかないだろう。 この劇は始まる前のストーリーが長くてアポロンの神託やスフィンクスの場面は飛ばしていきなり疫病と…
近隣の都市から来た青年貴族のメノンに対して行ったソクラテスの講義のようなもので、これが哲学だと言えるものだ。 メノンの質問とは、 「徳とは教育によって教え得るものか?」 というものであった。ソクラテスはそもそも「徳」について誰も知らないと言う…