村上春樹 ねじまき鳥クロニクル 第2部予言する鳥編 新潮文庫

  主人公の岡田トオルの妻クミコが突然家出をしてしまい主人公が途方にくれるところから始まる。風変わりな女性達が入れ替わり立ち替わり現れる。どうやら主人公はとてもモテる男らしい。

    読んで行くと離人症の症状と思われる記述が出てくる。

 「僕はあの男と話をするたびに、おそろしく空虚な気持ちになるんです。まわりにある何もかもがみんな、実体のないものに見えてくるんです。目につくすべてががらんどうに見える。でもそれがどうしてなのかを、口に出して正確にきちんと説明することができない。そしてそのおかげで、僕はときどき僕ではないようなことを言ったり、僕ではないようなことをやったりしてしまう。」(p66)

    このような仕掛けを共感できるかあざといと思うかがファンとアンチの境界になると思う。