映画 コラテラル (2004)

場所はロサンゼルス、翌日の麻薬事件の裁判に出廷する証人4人と女性検事を暗殺するよう請け負った殺し屋(トム・クルーズ)はあるタクシーを拾うと一人目の標的がいるマンションに向かった。

とまあ、こういう設定で話が始まるのだがこのタクシー、前の客が女性検事で会話が弾んで彼女の電話番号を運転手が受け取っている。一人目を射殺したところからハプニングが生じて殺し屋とタクシー運転手の珍道中が始まるのである。ロス市警とFBIもやってきて一枚噛んでくるがすぐ射殺されて蚊帳の外である。深夜の大都会で行われる一大アクションだが、ほとんどこの二人と女性検事の密室劇のような演出となっており、わかりやすい反面、低予算映画の作りを思わせる。

殺し屋が哲学を語ったり、平凡な運転手が半端ない活躍を見せたり、ジャズ演奏家が殺されたりするのはパルプフィクションカミカゼタクシーのオマージュに違いないだろう。

NNNドキュメンタリー オウム真理教 凶器の萌芽 坂本弁護士一家殺害事件30年 (2018)

平成元年11月4日未明に起きた坂本弁護士一家殺害事件から29年、今年7月に松本智津夫ら幹部の死刑が執行されこの事件に区切りがついた今、取材班は新事実を加えてこの短いレポートを制作した。

横浜法律事務所、坂本弁護士が収集したオウム真理教関連の資料が提示される。シヴァ神の汗(普通の塩)、オウムの水(教祖が入った風呂の残り湯)これらはオウムの霊感商法を暴く証拠となるはずだった。同僚弁護士の小島周一弁護士が語る。家族との面会交渉から入って行った坂本弁護士はオウムの霊感商法の実態を知る様になり法的に追及できると考えたという。民事訴訟の準備を進める中、平成元年10月にオウム真理教被害者の会を結成する。その1ヶ月後坂本弁護士一家が姿を消した。

現場に落ちていたプルシャを見つけた小島周一弁護士は磯子署にこのプルシャを持って行ったという。神奈川県警本部の内部資料「坂本弁護士一家殺害事件捜査の記録《執念の2,166日》」には事件1ヶ月後の12月6日に松本智津夫への事情聴取を行なったという記載がある。松本智津夫は一切関係ないと主張したという。その後教団によるクレームがあり捜査の進展が止まる中、平成二年二月高田局の消印の速達郵便が横浜法律事務所に届く。龍彦ちゃんの埋まっている場所の地図が書いてあった。4日後には神奈川県警の捜査員が現場を捜索、5月にも捜索したが遺体を見つける事はできなかった。そうした中オウム真理教は政界進出を企てたが平成二年の衆議院選挙では全員落選する。その後オウム真理教のマスコミへの露出が増して行く。教団の武装化も進めていた。第7サティアンではサリンを製造しようとしていた。平成六年六月に松本サリン事件、平成七年三月には地下鉄サリン事件が起こる。これによってやっと腰を上げた警視庁は5月16日教祖麻原彰晃を逮捕する。

岡崎一明元死刑囚の自首調書が示される。坂本弁護士の活動に激怒した麻原彰晃が幹部を集め、「ポアしちゃえ」と言ったという。公衆電話で指示を仰ぐと「全員やるしかない」と言われたという。これらの供述から平成七年九月に龍彦ちゃんらの遺体が発見された。この時現場に同行したのは岡崎一明元死刑囚であり、手紙を送った人物も彼である。

小島周一弁護士が語る。「現場の人たちは本当に一生懸命で、そういうところは本当に頭が下がる思いだったですが、もし違ってたら叩かれちゃうんじゃないかということで、まずそれ以外を潰しておこうという方針を立てたのではないかと、その方針を立てた上の判断はどうだったんだというのはどうしても思いますね。」

当時指揮を執っていた警視総監井上幸彦氏は語る。「宗教団体に対してなかなか手を加えるってのは余程のことでないと今までの日本の戦後の歴史の中で無いんですね。それをうっかりやるといやこれは信教の自由を踏みにじった暴挙であると、宗教団体を隠れ蓑にしたという、そこで彼らがそこまで行ってしまったと。」

小島周一弁護士が語る。「世の中がなんかおかしいんじゃないのか、世の中を良くしたいというようなことを正面から語ったり、活動する場というものが当時の日本にあったんですか、今はあるんですかという思いはあるので、その根は続いちゃうんじゃないかなという気はしますね。」

同期の中村裕二弁護士は怒りを込めて語る。「龍彦ちゃんの遺体を発見できていれば、後に起こる松本サリン事件も、地下鉄サリン事件も避けられたんではないかなと思うととても残念に思います。」

確か外国のジャーナリズムはそう言う論調だったような気がする。日本のジャーナリズムも弁護士に言わせるんじゃなく自ら論陣を張れば?ということではないか。

映画 沈黙のアフガン (2016)

アラブの春以降の設定なのでタリバンが盛り返して来ている状況である。この映画のストーリーもタリバン対軍曹率いる救出部隊という構図になっている。

視察に訪れた米国の議員がタリバンに拉致されマトゥバク村のホテルに監禁されている。救出部隊が議員を確保し、脱出を図るがタリバン兵がわらわら沸いてくる。銃撃戦になるが救出部隊は陸路での脱出に成功する。だが狙撃兵のジェイク(スティーブン・セガール)と負傷兵一名が取り残され建物に隠れて救出を待っているという状況になる。

前線基地に帰った軍曹だがジェイクらを救出する余裕はないと上官に言われ、NATO所属の女性カメラマンジャネットが付きまとってくるのである。すると軍曹はタリバンの攻撃を受けて立ち往生している武器満載の補給トラックを修理して運転してくる様指令を受ける。ここからの話はちょっと手品の様な展開になり非現実性が増すのだが現場に送られた軍曹らとこっそり付いて来たジャネットの活躍で無事任務を遂行しジェイクらも救出するのである。

どんな状況でも軍曹とジェイクは軽口を叩き合っており、軍曹の素晴らしい判断とジェイクの凄腕が発揮されることによりタリバンは殲滅されるという結末となる。ハードボイルド小説の様な戦争映画である。

河出書房新社 太平記 山崎正和訳(1370ごろ)

東洋文庫に倣って太平記の現代語訳を読んで見た。東洋文庫3巻分の分量がある。

巻の十一 (前略) 承久からこのかた、北条氏が政権を執って九代、年月はすでに百六十余年に及び、一門は世に栄えて、勢い盛んなあちこちの探題や守護となり、その名を挙げて天下に知られた者はすでに八百人以上になった。ましてや家ごとの郎等は万とも億とも数知れぬほどであったから、たとえ六波羅は容易に政略しえても、筑紫と鎌倉とは十年二十年の歳月を費やしても征討はむつかしいと思われたのに、日本国六十余州、しめし合わせたように同時に戦乱が生じて、わずか四十三日で一族が滅亡したのも、因果の不思議といわねばならない。 (後略)

太平記の資料的価値の評価は様々であるがリアリズムである事は間違いない。北条氏の滅亡の様子が詳しく書かれている。又、菅原道真の生い立ちから最後までが書かれているのも見逃せない。楠木正成の登場のあたりは物語的要素が満載でなかなか心を打つものがある。