元々公式の停戦交渉は行われていたがまとまる見込みが立たない状況にあった。交渉するグループの頭数が多すぎるというのもあるだろう。米国、南ベトナム政府、南ベトナム共和国臨時革命政府、北ベトナム政府が当事者である。
このドキュメンタリーでは実際の音声が使われておりキッシンジャーのダミ声とジョークそれによる冷ややかな笑い声も聞くことができる。いうまでもなくキッシンジャーは沈着冷静な策士だがレ・ドク・トも相手の発言に対し理路整然と言い返してくる。
米国は何れにせよ撤退するつもりでいるのでなるべく良い条件を得ようとする交渉に過ぎない。大きな争点は南ベトナム政府の追放、北ベトナム軍の南ベトナムからの撤退だが前者は北ベトナム側が譲歩し後者は米国側が譲歩した。交渉の詰めのところでニクソンが交渉テクニックを使う。レ・ドク・トが帰国するや否やハノイに猛爆を加えたのである。これで決裂してもおかしくない位だが交渉は再開される。沈着冷静なレ・ドク・トはたっぷり皮肉をこめたスピーチをお返しする。
合意文書がとうとう出来上がりパリで四者が調印し和平が実現した事になる。ニクソンは大喜びである。これにより1973年のノーベル平和賞がヘンリー・キッシンジャーとレ・ドク・トに授与される事が決まる(レ・ドク・トは辞退)。