映画 1999年の夏休み (1988)

登場人物は4名の寄宿生で、この年の夏休みに起こった出来事を描いた物語である。美形の少年たちによる会話劇だが舞台となる校舎、調度やコンピューターなどの小物の造形がかなり凝っていて、センスと夢を感じさせるものがある。原作は萩尾望都のコミックス「トーマの心臓」である。

物語の発端は悠という少年の真夜中の失踪で、和彦への手紙を残しており、悠はあたかも入水自殺をした様に見える。ところがその夏休み中に薫という悠と瓜二つな転校生がやって来て寮に波乱を巻き起こすのである。普通に考えればオカルト的な事象であるが、話が進むにつれ薫の正体が何となくバレてくるのである。

作品の出来は上々で最近散見されるベタで素人風な会話劇とは違って、台詞が鋭く切り込んでくるし、必然性も十分といった感じで、まさに劇作の名手の手によるものだと思う。