映画 跪く女 (2013)

スウェーデンの豊かな生活の一端を見たような思いを抱かされるが、あの国もまあ十分病んでいるという作品である。

 新人で美人の教師イダは同僚の教師クリステルと新婚生活を始める。北欧なのでおそらく事実婚ではないだろうか。クリステルは頼りになる面もあるが、マザコンであり、切れると心にもないことを言葉にして相手に浴びせかけるという性癖がある。イダは素直な性格でモラハラ気味のクリステルにもついてゆこうとするが、教室で言うことを聞かない生徒たちに対処できずに苦悩していた。

イダに接近してくるのは同僚のリンダでタバコを勧めたり落ち込んでるイダを街に連れ出して遊んでくれる。イダに対してとても適切なアドバイスをしているように見えるが、クリステルの天敵のような女で後で大トラブルが起こる。

 案の定独占欲の強いクリステルはイダにリンダと会うのを禁止するのだが、その前にリンダ対クリステルの背筋の凍るような舌戦があった。リンダという女には底知れぬ能力があるのではないだろうか。結末に向かって中東出身の不気味な生徒が絡んできてイダを追い詰める。これは移民問題かと思っていたが何か夫婦の関係にイラン映画の雰囲気があると途中から感じたのである。ベルイマン監督のような正統的スウェーデン映画とは少し違うと思った。

 結末では変態的あるいは女性にとって屈辱的なシーンが映され、イダはクリステルから去ってゆく。クリステルが変態だった訳では勿論ない。イラン出身のマニ・モーセラット監督の作為である。