映画 結婚の夜 (1957)

  銀座のデパートに勤めている敦夫(小泉博)は驚くほどの女たらしである。次々と持ち込まれる見合い話も敦夫の女性関係を調べ向こうが断って来るケースがほとんどである。ある日時計の修理にやって来た長い髪の美女が気になった敦夫は持ち前の軽いフットワークで彼女と恋人同士になる。

  彼女は蓮子と云いアルバイトをしながら洋裁学校に通っている。卒業した暁には親に金を出してもらい店を持つのだと言う。彼女のアルバイトについて敦夫が問いただすと何故か口を濁す蓮子であるがいかがわしものでは無いと言う。敦夫は深く追求はしなかったが後でこれが敦夫を恐怖のどん底に突き落とすのである。

  彼女と体の関係を持った敦夫はそろそろ飽きて来たのか彼女からのプロポーズも適当に聞き流し新しい見合い話の方を進めていた。今度は先方も乗り気であり急遽結婚式が執り行われる事となる。神前の式を挙げ三々九度が行われる。御神酒を注ぐ巫女の顔を見ると無表情の蓮子が目の前に立っていた。震える手で酒に口をつける敦夫だが酒に毒は入ってはいなかった。この辺では観客も爆笑したのでは無いだろうか。

  話はいよいよサイコホラーの様相を呈して来る。二等列車に乗り温泉地に向かう新婚の二人だが向かいの座席にやって来て座ったのは蓮子であった。何も言わずじっと見つめる蓮子。居たたまれなくなった敦夫はトイレに立ち蓮子を手招きする。デッキで二人は口論となり突き飛ばされた蓮子は線路に落ちていった。何食わぬ顔で座席に戻った敦夫は窓の外に蓮子の幽霊が飛んでいるのを見る。

  ホテルに着きラジオを聴いている敦夫。線路で女性の死体が発見され女性の手にはボタンが残っていたとニュースで報じられる。ガタガタと震える敦夫の元に一風呂浴びた妻が部屋に帰って来た。妻の顔が蓮子に見えた敦夫は後ずさりして窓から下へと転落死するのである。

  当時の世相を題材にしたホラーだが小泉博といえばクイズグランプリの司会でおなじみだった人なので昔はこんなプレイボーイだったのかと意外に感じた映画だった。