東洋文庫 幽明録 遊仙窟 他

  「遊仙窟」は唐の時代に書かれ遣唐使により日本にもたらされた伝奇小説である。作者は張鷟(ちょうさく)とされている。皇帝の命により黄河源流の僻地に赴任途中の文成が迷い込んだのは神仙窟という館で妖艶な未亡人の十娘と兄嫁の五嫂が文成を接待する。山海の珍味とお酒が運ばれてきて胡楽の生演奏もある。五嫂と文成は音楽に合わせて踊り、双六と囲碁に興じる。館の裏に出ては遊び文成は弓矢の腕を披露する。座敷の奥には寝室があり十娘に誘われ文成は何度も交接するのであった。随分立派な問答歌で埋められている作品であり日本文学にも影響を与えたに違いない。山上憶良も愛読者だったらしい。

  「幽明録」は魏晋南北朝(400年頃)の時代に書かれた怪綺談集で劉義慶の作とされている。志怪小説とも言われる。説話風の平易な怪綺談がたくさん集められている。