清朝乾隆帝期の文人で詩人の袁枚の著書で全二四巻、767話ある。表題は論語の子不語 怪力乱神に因んでいる。要するに孔子が論じようとしなかった怪異現象の分野における説話集である。袁枚の人となりは序にこう述べてあることから推し量ることができる。
余は生来嗜好が少ない。飲酒、音曲、賭博など人と遊興・娯楽をともにすることは一切やらなかった。文学・歴史以外自ら娯しむことがなかったのだ。
読んでいても暗い感じはしない。理知的な文章である。本文を一つ紹介してみる。
第7話 知県、冥府に行く
四川の豊都県は俗に人と鬼の交界の処とされている。県の中ほどに井戸があって毎年紙銭や帛や銭貫を焼いてここに投じる慣習がある。その費用には三千金もかかり、これを陰司銭粮と称していた。この納付を怠ると伝染病がはやるという。清初のころ劉綱が知県として赴任した。彼はこの事を聞いて銭粮の納付を禁じてしまった。
このあと知県が談判のため井戸に入り閻魔様と伏魔大帝と会って話をするという流れになる。意外と二人とも優しく談判は概ね上手くいったが同行した李という男の一言が大帝の怒りを買い李は間も無く死んでしまうという話である。豊都はあの世の都と言われている処で映画長江ではさだまさし氏も訪れている。