東洋文庫 清俗紀聞 1(1799)

本書は長崎奉行中川忠英が部下に命じて長崎に来ている清国商人から聞き取り調査を行なわせ、当時の清の文物、風俗を絵図と短い文章でしるしたものである。幕吏である近藤重蔵らと長崎唐通事を動員して行なわれた。同じく東洋文庫の清嘉録(1830)とは内容と時代が似かよっている。

巻之一 年中行事

(略)

月宮奠

8月15日は月宮の誕生と言い伝え、家々露台に卓を設け斗香ならびに月餅・西瓜・梨子・柿など円き果物の類を供え、家内打ち寄り酒食を設け明月を賞す。また朋友など聚り看月会とて酒宴を催すもあり。(略)

歳暮

12月24日より親類互いに歳暮の贈り物とて、年こう、魚肉、海参、魚翅、胡桃、柿餅、橘子、橄欖、竜眼などを送る。

迎春

立春の前日に府州県ともに太歳と春牛とをこしらえ、別々に台に乗せ太歳に春牛を牽かせ郊外に置き、その地の本官は衣服をあらため轎子に乗り、下属の吏役は銘々春花をたずさえ、出迎え、金鼓を打ち、涼傘をたて行列し、行春としてしばらく郊外をめぐり直ぐに城内へむかえ入る。これを迎春という。(略)

巻之二 居家

(略)

子供の教育

男子四、五歳、五、六歳になれば書法を教え読書せしめ、女子は針線第一として教え、なかにも女に書法を教え読書詩作等せさする者あり。書法は男女ともに楷書より教ゆるなり。そうじて書法読書の師は、有力の家は家内に館を設け師伝を受くることあり。この先生を門館先生という。家内に師を請ずるほどの力なき者は寺院に館を設け、日々家内より往来して書法を学び読書などせしむ。もっとも女は外館に出て読書などすることたえてなし。売家の子は師を請じて算法を教授せしむ。 (略)

巻之三 冠服
(略)

図絵および本文の原文は国会図書館デジタルアーカイブから閲覧できる。

NUTUBEヘッドホンアンプ

久しぶりにNUTUBEヘッドホンアンプで楽しむ。まあヘッドホンアンプというものは耳元で囁かれるのと同じなのでどれもそこそこ良く聴こえる事に最近気がついた。距離が近すぎて脳がある意味無防備な状態になる。実はフラットアンプのクオリティーの差が出るのはプリアンプに使った時なのである。

ハーバート・ノーマン全集 第1巻

ハーバート・ノーマンはカナダ人宣教師の息子で長野県軽井沢町で生まれ幼少時を過ごした。国に戻るとトロント大学ケンブリッジ大学ハーバード大学を卒業、カナダ外務省に入省し外交官として来日しGHQと関わりを持つ。アメリカでの赤狩りが始まり共産主義者の疑いを掛けられると赴任地のカイロで自殺した。ハーバート・ノーマンの人物についてはNHKETV特集でも1999年に取り上げられている。

「日本における近代国家の成立(1940)」より一部抜粋する。

第二章 明治維新の背景

(略)国学者たちが言外に幕府の特権を打破する含みをもって倦むことなく勤王を説いていたあいだに、そのうちの敏感な人々は西洋の科学に目を向けることに少しも矛盾を感じなかった。かれらのうちにはオランダ語を媒介として西洋の科学、思想について相当の知識を蓄えたものが少なくなかった。最も熱心な蘭学者は往々にして浪人や下級武士に多く、藩の干渉または藩士としての義務を免れて研究に没頭することができた。(略)書物はとぼしく、正統派儒者の偏見に遮られ、官憲に迫害され、時には狂信的攘夷論者による暗殺の危険にさえさらされたのであった。こうして、佐久間象山渡辺崋山高野長英吉田松陰などの進取的人物は西洋の知識を学んでこれを日本の条件に適用しようとする抱負のために命を捨てた。(略)

徳川末期の日本と阿片戦争当時の中国との根本的な相違は実はここにある。中国の専制官僚は文官的な処世感を持っており、進士試験の制度によって採用される紳士階級の出身者を主体としていた。この学者ー官僚は儒教正統派を後生大事にまもっており、いわばそれに対して従順であるかどうかがこの仲間にはいる親鍵となっていた。かれらは、西洋文明の現れをあたまから無視または嫌悪していた。(略)中国の行政官僚である儒教官人たちは旧制度とその因襲に執着して、いかなる根本的改革を行うことも躊躇した。官人階級はたしかに煩雑な行政機構の弥縫糊塗にこれ務め、ついにはこの崩壊を招き、みずから制度の残骸の下敷きになって滅亡し去った。(略)

こう書くと味も素っ気もない文章になるが、手塚治虫が漫画にすると「陽だまりの樹」のような遊び心のある作品になるのである。この漫画をkindle unlimitedで読んでいると当ブログで取り上げた清河八郎が登場してびっくりした。