説話集のような体裁だが読んでみると大内義隆が家臣の陶隆房によって殺されて周防(山口)を乗っ取られた大寧寺の変(たいねいじのへん)やら、第13代将軍足利義輝が松永久秀と三好三人衆の軍勢に夜襲され一族諸共殺される永禄の変を扱った記述など政治情勢が次々と出てくる。これらは事実とはやや異なる所も有るらしいがよく活写されているし因果関係もわかるような述べ方がされている。当時のジャーナリズムに直接触れるような感触がある。
この頃守護や大名などのいわゆる諸国は勝手に関所を作り交通を遮断したため京阪の商工の人たちは商売が立ち行かなくなる。商人たちは家財を質入れしたり逐電したりするがやがて餓死者が続出するようになる。民衆からの直訴に対し幕府は徳政令を出すくらいの事しか出来ないのである。この状況を打破するには信長、秀吉のような強大な武力を持った人物が必要だったのだと言える。