フォークナー 八月の光 (6)

ジョーの逃亡生活のあらましが語られる。そしてジェファーソンにやって来たジョーはバーデン屋敷に住むバーデン女史を見出すのである。独特の嗅覚で年上の女性に接近し取り入るのが得意のようだ。イタリア系に見られるジョーはアルパチーノのような色男と想像する。

ジョーは離れの小屋に住み、母屋の台所に出入りするようになる。そのうち製板工場で働きはじめ婦人の情夫になった。

バーデン女史の生い立ちが評伝のように詳しく語られる。祖父はキャルヴィン・バーデンといい家出後カトリックの僧院で一年修行し、ユグノー教徒の娘と結婚する。父はこう言った。

「このことを覚えておきな。おまえのおじいと兄がここに埋められているのだ、殺されてな、だがそれは一人の白人にではなくて呪いによってなのだーー神様がおまえのおじいや兄やわたしやおまえのことを考えるよりもずっと前に、一つの人種すべてに与えた呪いによってな。その罪のために白人種の宿業と呪いの一部になって、いつまでも永久的に呪われる運命の人種なのだ。それを忘れるでないぞ。(略)生まれてきたものもこれから生まれてくるものも、白人の子供たちすべてには、この呪いがかかっておるのだ。誰もそれから逃れることはできないのだ」

このような二人の会話がある。

「あんたは自分の両親が誰なのか、まるで見当つかないの?」

「ああ、二人のうちの片方が黒ん坊だということ以外にはな。前にも話したとおりさ。」

まあこの辺りがこの小説の核心ではないだろうか。