吉田秀和 名曲のたのしみ 2012年6月2日放送分

時報

(女性アナの声で) 名曲のたのしみ。41年にわたって解説を担当された音楽評論家の吉田秀和さんが去る5月22日お亡くなりになりました。この時間は今年4月に収録したラフマニノフその音楽と生涯の第23回をお送りします。

名曲のたのしみ吉田秀和。先々週はラフマニノフの作曲したエチュード練習曲集、音の絵を聴きましたけれども今日はその続きになります。というのは音の絵の曲集は1916年から翌々年にかけて書かれたものですがその中間の1917年の12月ラフマニノフは家族とともにロシアを離れてスカンジナビア諸国で演奏旅行の旅に出ます。で、その間にロシアはその頃は政情が非常に不安になりましてね、革命がもう目の前に迫ってきた。何回もそういう企てがあって失敗したりなんかしてたんですけどもそしてもう国にとしては非常に不安定な状態に陥ります。で、このときラフマニノフは決定的にロシアでの生活を打ち切る決心をしていたのか、わかりません。けれども彼が外国に出てるうちに第二次世界大戦が火花が切られて1941年にはナチドイツ軍のロシア侵入が開始され彼は祖国の運命に大きな憂慮を持ちながら外国に出たままロシアに帰る事を躊躇してただその日を夢見ながらも外国暮らしをしてそして死んでしまいます。で、一番長くいたのはアメリカなんですが、アメリカ滞在中も結局その間に僅か3曲しか作曲ができなくなってしまいます。やっぱり国が乱れているということが彼には非常に大きな不安というか気持ちの動揺の原因になったんでしょうね。ていうのは外に居てもいつもロシアの事を思ってはいたらしい、だから戦争が始まったら本当に国に帰りたかった、それができないので彼は言ってみればチャリティーの演奏会を一生懸命やった、でその金を全部祖国に送ったりしています。で、今日これから聴くのは第4番のピアノ協奏曲ですけれどもこれは大規模な大きなコンチェルトではあるけれども出来栄えは今ひとつ、やっぱり内心の不安がそのまま反映してると言ったりしたらおかしいけれども、なんか、落ち着かないものになりましたねえ。しかしそういうものとしては記念碑的な大作ではあります。初演は完成した1926年の翌年作曲家自身のピアノソロとストコフスキー指揮のフィラデルフィアオーケストラとの共演で行われましたけれども、聴衆の反応は良かったんですけども批評はあんまり芳しくなかったみたいですねえ。新しい協奏曲は完全に19世紀の遺物でチャイコフスキーが作曲したものみたいだと言う人もいれば シューマンの貧弱な亡霊だなぁ、言ってることはたくさんあるけれど大事なことは言っていないといったような物が書かれているそうです。これは僕ラフマニノフの伝記の中で読んだんですけれど。ラフマニノフそれを気にして1937年には大幅な改訂を行いまして現在僕たちが聴くのはその改訂版によるものだそうです。それじゃアンスネス・レス・オーヴェのピアノソロ、パッパーノ指揮ロンドンシンフォニーオーケストラの演奏で第一楽章から第三楽章の最後まで続けて聴くことにしましょう。〜音楽〜

今聴いたのは云々。今度はミケランジェーリのピアノ独奏による同じ曲のCDを聴きましょう。むかーしミケランジェリが初めて日本に来た時、僕どういう訳だか誰かに呼ばれてミケランジェリと一緒に食事しました。その時ミケランジェーリがあんまり愛想のよくない人でしたけどね、で話がなくて困って僕も、僕もあまり愛想よくなかった、それで話題の一つとして「貴方はラフマニノフの第4番を入れてて有名な2番も3番も全然弾かないってちょっと変わってますね。」と言った、ミケランジェーリ、ニヤーとして「みんなにそう言われるんだけども2番と3番はラフマニノフ自身に演奏したいいレコードが出てるけど第4番は彼残してないからね。それで僕やったんですよ。」と言ってました。そのミケランジェリの演奏でこの4番聴いてみましょう。エットーレ・グラシスの指揮、フィルハーモニアの演奏です。〜音楽〜

今聴いたのは云々でしたけどまだ少し時間があるってんで今度は作曲家のラフマニノフ自身が弾いた盤で聴きましょう。第2楽章これがやれると思います。残念ながら第2楽章全部聴くことは出来ません。聴きながらお別れという事になると思います。ピアノ独奏はラフマニノフ自身、オーマンディ指揮のフィラデルフィアオーケストラの演奏です。 〜音楽〜

えっ、有るじゃない。

時報

映画 風立ちぬ (2013)

2013年興行収入一位で120億2000万である。二位のONE PIECE FILM Z 68億7000万は見ない。

これは宮崎駿監督の最高傑作でありこれを超えることは難しいだろう。クオリティが高い。構図、アングル、色使いなどすべてに完成されていると言える。音楽にも気合いが入っている。

ストーリーは零戦設計者堀越二郎の評伝風であるがほぼ創作でありこれに堀辰雄風立ちぬを組み合わせたハイブリッド様式になっている。相手の菜穂子もこれまでに無い美人で新婚初夜のシーンもある。飄々とした二郎とそれをサポートする物わかりの良すぎる大人たちが登場し、ついに零戦は完成に至る。後は史実の示す通りだが映画では省略された。

米軍も驚く様な零戦の異能ぶりについては映画零戦燃ゆの方がわかりやすく描かれている。この映画では戦争について正面から向き合って何かを主張するではなくいつもながらファンタジーの様な描き方をしているようだ。

前略おふくろ様 II 第23回 (1977)

母の手紙の音声とともに蔵王のロッジで元気に働く母の姿が映し出される。サブは山形に居た。目覚めて窓を開けると雪の蔵王が見える。

兄弟、親戚が祭壇室に集まっている。遺影がありろうそくの火が揺らめいている。死の状況が語られる。母はゴンドラで降りてきて家に上がり眠いと言いながら床についたまま亡くなったと言う。

サブは朝ご飯を食べている。とうとうおふくろの死に目に会えなかったわけでと独白している。かすみちゃんから逝去を悼む電報が届く。遺書が出てきた。書類と通帳の場所を記し葬儀と通夜について簡素にやるよう指示をしている。サブに料理を作らせるようにと書いている。早く納骨し皆仕事に戻るよう指示している。

海ちゃんが帰ってきた。サブは市場で買い出しをして腕をふるう。口さがない親戚達が噂話をしている。斎藤のおじちゃんが海ちゃんの父の悪口を言う。サブは手持ち無沙汰になり家中を歩き回る。海ちゃんは顔を出せずに隠れていた。兄によると母は遺言状を6年前に書いたのだという。その頃家の改築話があったが母は改築に反対だった。だが要望は容れられず母は死にたいと漏らしていたという。

雪の道を葬列が続く。寺の前で秀さんが待っていた。秀さんはその夜蔵王に泊まるという。サブが引き留めたが元気出せよと言ってバスに乗った。翌日サブと兄は蔵王のロッジに母の荷物を取りに行く。兄と話すサブ。自分は仙台の話は断ると言う。肝心のおふくろがいなくなったからである。サブは母の遺品を見て余りにも貧しいと独白する。

秀さんと駅のホームで話す。秀さんは仙台の話を受けろと言う。サブははいと言う。サブが戻ると海ちゃんが口の悪い斎藤のおじさんにビールをぶっ掛けて蹴飛ばして何処かへ行ってしまったという。海ちゃんはスキーロッジに居た。サブを電話で呼び出しよもやま話をする。タバコを吹かしながらお兄ちゃんも結構ロマンチックだからさあと言う。

サブは秀さんの言う通り明日東京に帰り全部整理して仙台に移ることに決めた。

映画 テルマエロマエ (2012)

2012年の興行収入二位で59億8000万である。一位のBRAVE HEARTS 海猿 73億3000万は今回見ない。

紀元2世紀のローマ帝国において浴場建設をめぐって争いが勃発し何故かそれに日本の銭湯や温泉愛好者が参戦する。これを大真面目に(フジテレビの番組カノッサの屈辱風に)展開しているところが受けるポイントである。その結果ローマ在住の浴場設計者ルシウス(阿部寛)がアイデアを得て成功し、協力した方の漫画家志望の少女真美(上戸彩)も夢を諦めず前へ進むというストーリーである。古代ローマ現代日本間の行き来はSF的な設定が為されている。好評につきテルマエロマエII(2014)も製作された。

吉田秀和 名曲のたのしみ 2012年5月26日放送分

今日は試聴室。シューベルトのシンフォニー第1番と2番を聴いて見たいと思います。シューベルトは31歳と言う若さで死んでしまいましたけれども、その短い生涯の中でシンフォニーは8曲書きましたね。若い頃の1番2番といったものはほとんど演奏会には載りません 。けど、こないだ僕久しぶりにいわゆるピリオド楽器による演奏で聴いて見たらとても面白かった、とても新鮮に聴こえたそれで、あ、これは皆様方と一緒に聴き直してもいいなあと思ったんで今日はそのプログラムを採りました。最初にシンフォニーの1番、ニ長調、D 82というのを聴きましょう。シューベルトが、全寮制の学校ですがね、そこで音楽を勉強したわけですけどもこれ書いてすぐ学校を出ちゃったから卒業作品と言ってもいいかもしれません。そのころは彼はハイドンモーツアルトのいわゆるウィーン古典派の音楽を手本に勉強してたわけですがこのシンフォニーもその跡が残っています。けどやっぱりシューベルトシューベルトでなければ誰もやらないような音の扱い方もこの第1シンフォニーでも聴かれると思います。いちばんの特徴は爽やかな明るさですねえ。シューベルトのシンフォニー続けて聴きましょう ダヴィッド・ジンマンの指揮したチューリッヒのトーンハレオーケストラの演奏です。〜音楽〜

今聴いたのはシューベルトの第1シンフォニー、今度は第2シンフォニー変ロ長調D 125、これはベートーベンのエロイカと第九シンフォニーに次いで最も長いシンフォニーだったと、その頃はね、同じく4楽章からできてますけれども、そして長い割には第1シンフォニーほど、なんていうかなあ、気持ちも良さがずっと通ってるてんじゃなくて、他のものも少し出てきているようなもんです。第3楽章は抜きましょう。時間の関係で。それじゃジンマン指揮チューリッヒトーンハレオーケストラの演奏でシューベルトの第2シンフォニー聴きましょう。〜音楽〜

今聴いたのは云々。今日はその前に云々を聴きました。演奏してたのはジンマンていう人、そしてチューリッヒトーンハレオーケストラが演奏してました。それじゃあ又、さよなら。

時報

新訳 世界史資料・名言集 山川書店(1975)

今回購入したのは1版38刷(2006)となっている。古代から現代までの歴史史料や著書から抜粋したものを並べている。史料の原文の日本語訳に直接当たる体験ができて大層便利な物である。東洋文庫を片っ端から読んで行くのと割と近いものがあるのだが少々気になる点もある。

122.イギリスのインド支配 1. セポイの反乱の項ではイギリス人将校の回想録が載っている。これによるとある日守備隊本部においてイギリス人将校がインド人傭兵達から発砲を受け、逃げ出した先で盗賊に会い身ぐるみを剥がれて首を絞められるという体験が書かれている。これはこれでいいのだが僕が昔読んだ史料集では反乱を起こしたセポイ達がイギリス軍に制圧され残虐に処刑されて行く光景が書かれていてこれこそテロなのだと言う著者の感想があったのが印象に残っている。いろいろ忖度した結果差し替えてしまったのか別の史料集だったのかよくわからないがこれでは牙を抜かれていて読む人へのインパクトが小さいのではと思った。定価486円と良心的な価格である。

映画 コクリコ坂から (2011)

2011年興行収入一位で44億6000万である。二位の劇場版 ポケットモンスター ベストウィッシュ 「ピクティニと黒き英雄ゼクロム」「ピクティニと白き英雄レシラム」43億3000万は見ない。

昭和38年の横浜を舞台とした女子高生メル(海)の物語である。海は美人で健気で明るい少女で朝鮮戦争に巻き込まれ死んだ父を偲んで毎朝旗を揚げている。海外に出張中の母に代わってコクリコ荘を切り盛りしつつ学校に通っている。妹も弟も元気に通学している。海は学園で持ち上がった部室取り壊し問題に反対の論陣を張る俊となんと無く良い感じになるが異母兄弟疑惑が持ち上がり一時グダグダになる。だがそれは誤りとわかり両想いの二人はハッピーエンドとなるという話である。

当時の車やら流行歌が次々と出て来て時代を演出しているがやり過ぎの感じがある。色使いもカラフル過ぎてどうもしっくり来ない。生徒集会で皆で歌った「白い花の咲く頃」には奇異な感じを受けた。

東京オリンピックのポスター、上を向いて歩こう氷川丸も出て来る。俊は国立大を、海は医者を目指すという。史郎は東大だろうか。エリート志向の強い連中である。落ち込んでいた海だがアメリカから帰って来た母から事情を聞き真相が明らかになる。結局は戸籍の偽装なのだった。さらに小野寺船長に直接事情を聞き二人も納得する。クライマックスはなんだか日活の青春映画のようになっていた。