村上春樹 羊をめぐる冒険 (1982)

   お盆休みに読んでみた。書店で本をめくってみて安部公房風のシュールな章題に惹かれたからだ。
 
「余計な詮索をするつもりはないんだ」と彼は言いわけをした。「でも彼女とは僕も友だちだったしさ、ちょっとしたショックだったんだよ。それに君たちはずっと仲良くやってると思ってたからね」
 
   ここだけ安部公房風の文体だった。あとはあまり似ていないようだ。安部公房のような強烈な個性の作家はもう出てこないのだろうか。
 
参考 事件の背景
 
  安部公房が鋭い指摘をすると県の職員がこう答える。
 
  「とんでもない!」といささか狼狽気味に、「むろん、県なりの見解はもっています。しかしそれがどういうものであるかは、残念ながら、いま申し上げるわけにはいきません。いえ、秘密だというわけじゃない。秘密ではないが、それが外にもれることで、目的が果たせなくなっては困るということですな。」