失われた時を求めて (14)

家政婦フランソワーズの裏の顔が描かれる。若鶏を締める時の怒りに満ちた言葉や、台所番女中のお産の時に吐いた暴言はプルーストを少なからずビビらせたようだ。

次にルグランダンを観察した結果ある疑念を抱くようになる。申し分のないエリート紳士どころかスノッブであると結論づけている。それにしてもルグランダン氏の会話は詩的な響きに満ちている。以下引用文。(吉川一義訳)

《私がこの世で愛しているのは、結局のところいくつかの教会と、二、三の書物と、やはり、二、三の画ぐらいです。それと、あなたの青春のそよ風が私のところにまで花壇の香りを届けてくれるときの月の光ぐらいでしょうか。》