失われた時を求めて (67)

アルベルチーヌは来ているはずと思っていたプルーストは肩すかしを食わされる。帰るや否やプルーストの問いかけに対しフランソワーズは「どなたもいらしてませんけど」と言ったのだ。その言葉に動揺したプルーストはまたもや4ページくらいフランソワーズに関する繰り言を述べるが、冷静になると電話の交換機を自分の部屋に切り替えて待つ。予想通りアルベルチーヌは電話をかけてきたが、何だか来たくなさそうな雰囲気である。駆け引きの上手なプルーストは上手く誘導してアルベルチーヌを来させると、すぐさま接吻、愛撫などの行為に及んだのである。

そのとき応対したフランソワーズは、「アルベルチーヌは他の男に身を売っていたに違いない」とプルーストに仄めかす。女性の勘は鋭い。プルーストの方もアルベルチーヌの事はもはや何も信じていないらしく聞き流している。

天才作曲家ストラヴィンスキーについてはこの様に言及されている。以下引用文。(吉川一義訳)
《つぎからつぎへとバクストやニジンスキーやブノワのみならず、ストラヴィンスキーの天才を世に知らしめたバレエ・リュスの驚異的な隆盛とともに、こうした新たなすべての偉人たちの若き後見人たるユルベレティエフ太公妃が、頭のうえに巨大な羽根飾りを揺らして登場し、そんなものを見たことのなかったパリジェンヌたちがこぞってその真似をしたときは、人びとがこの不思議な女性はバレエ・リュスのダンサーたちの手でおびただしい量の荷物の中に入れられ、いとも貴重な宝物のように運ばれてきたのだと信じても不思議はなかった。》