失われた時を求めて (46)

(ヴィルパリジ侯爵夫人邸での茶会の続き。)しばらくするとゲルマント公爵夫人が外出がてらという出で立ちで現れた。さらにルグランダン氏がヴィルパリジ侯爵夫人に面会を求め上がり込んでくる。この時のルグランダン氏の長広舌は聞くに耐えないもので、プルーストを見た時しまったと思ったに違いない。案の定この後二人の仲は険悪になる。

ゲルマント公爵夫人は叔母であるヴィルパリジ公爵夫人と軽口に近い会話を楽しんでいる。プルーストは勿論聞き耳をたてる。そんな中ゲルマント公爵夫人がベルゴットの事をとても高く買っているのを聞きショックを受けるのである。以下引用文。(吉川一義訳)

《「その晩餐には、ババルより、もっと才気あふれるかたがいらしたのよ」とゲルマント夫人が言ったのは、ブレオーテ=コンサルヴィ氏と随分懇意にして、氏を愛称で呼ぶことでその親密さを見せつけようとしたのだ、「ベルゴットさんですわ。」(略)私は、それまでの均衡が崩れ、ベルゴットがブレオーテ氏の上位に躍進するのを見て悲しくなった。だが、なによりも、『フェードル』上演の夜、私がベルゴットを避けて本人のところへ行かなかったのを悔やんだのは、ゲルマント夫人がヴィルパリジ夫人にこう言うのを聞いたときである。「あのかただけよ、私が知り合いになりたいと思うのは」》

ベルゴットは無手勝流でプルーストを打ちのめしている。男として器が大きいのはベルゴットだ。