東洋文庫 マッテオ・リッチ伝 1(1969)

本書は東大教養学部出身の俊英平川祐弘氏による書下ろしである。豊富な資料の引用によって構成されているが、著者の叙述の部分が面白いので一部紹介する。

《20 マンダリン

(略) シナ官吏(マンダリン)の特徴は科挙の制で選ばれた点に、世襲封建制と異なる進んだ面がある。ところがその官吏の威張っている様が、十六世紀末の西洋人にはスキャンダルと映じたのである。シナの統治の妙に、耶蘇会士は一般に感心している。世界で一番広大な国が一人の王によってうまく治められている。百五十府や百五十州や千百余県という行政は末端の里甲制にまで及んでいる。魚鱗図冊という土地台帳ができていて、賦役黄冊という租税台帳が整備されている。そして一条鞭法によって税法は銀納化に一本化されつつある。五千八百五十五万人という膨大な納税者の数が把握されているし、物産はまことに豊かで国民は勤勉である。シナ国王の収入は全ヨーロッパの王侯の収入にアフリカからの収入をあわせた以上のものがあるだろう。そしてヨーロッパやアフリカとちがってここには平和(pax sininica)がある。》

ローマや秦の例を挙げるまでもなく、強大な国家がいくら富を蓄積してもいつかは滅亡するというのが歴史の法則である。本論の方はルッジェーリ、ヴァリニャーノ、書簡集からの引用で精密に作られているが長くなるので省略する。東洋文庫ではよく目にする人たちである。

別電源式SITアンプ (7)

電源部にはリプルフィルターを挿入してある。

これで可聴域のノイズはスペクトラムから消失した。

調整中に懸念していたDCオフセットはスピーカーに繋いで音楽を出すと数mVに落ち着いた。ミューティング回路も不要である。音はやはり素晴らしかった。自作界でもまだ稀少なオールFET、SIT SEPPパワーアンプである。

歪み率を測定した回路を示す。

この後C4382をK214に変更したのでこれは参考データである。

別電源式SITアンプ (6)

別電源式SITアンプ(別名 カバンに入れて持ち運べるB1)の製作も大詰めに近づいて来た。

K214のゲート抵抗にかかる電圧

K214のソース抵抗にかかる電圧

ここまでくればほぼ間違いない。今日からミノムシクリップからICクリップに移行した。これなら十分安全に電圧チェックできる。

東洋文庫 夢酔独言 他 (1843)

著者の勝小吉(1802〜1850)は勝海舟の父にして宮本武蔵より凄い武士と言われている。さていったいどういう事なのか。本書に併録されている『平子竜先生遺事』を読んでみよう。

《二、或時又々平先生を尋ねしに、早速逢はれ、種々咄の間に、足下は学問は好み候やとの尋に、拙者学問一向嫌ひにて、読み候事これなき由候へば、それは悪しゝ。学問は英雄の下地なるに、これより心懸け候へとの事、予が答に、これまで親兄弟共度々進め入り候へども致さず候。余儀なく少々始めし事あるが、兎角気分に障り候由。尊師の仰故仕りたく候へども、右の通り故に、此儀ばかりは承知仕らざる由答へこれば、それならばそれにして置き候へ。然し学問せぬ武芸者は卑夫の勇にして、三味線弾き候芸者も同様なり。ただ忠孝を忘れざる様に心懸け申すべしとの事なり。》

もうこれはなかなかの文章だが解説文にはこう記されている。

《だが、ほとんど文盲にも等しかったこの男は、ほかの多くの旗本たちと違って、その晩年に思い立って文字を習い禿筆を呵して自らの生涯を省み書き記したのである。》

また解説文にはこうある。

《(略)少年麟太郎は貧乏にまけずに刻苦勉励、一日一食に耐えて剣術の稽古に励み、寒夜に王子権現で木剣を振い、弘福寺で座禅に打込み、蘭学を修業すれば、蘭和辞書を一年半かかって二部写し取り、兵書を写しに毎夜八キロの道を往復し、ほとんど稽古着のまま机に伏して眠り、夏は蚊帳もなく、希望のない青春時代を無償の行為で過ごしたのも、いわば父の小吉の理想にこたえ、平子竜先生を手本として生きたのであろう。》

三者とも凄い人物のようである。『夢酔独言』の方は口語調で書かれており、あまりピンと来なかった。

MC型カートリッジ対応イコライザー(4)

途中すんなりと行かなかったが無事完成した。半固定抵抗の不良が分からず随分遠回りした。DCサーボは今回は取り除いた。なので古典的なACアンプになっている。

毎日鳴らして様子を見ている。問題はなさそうである。

現在の回路図だけ示す。

4石MOS FET パワーアンプ(6)

完成したのでアイドリングとオフセットをみる。アイドリングの安定度は鉄板で、歪み測定中も一定だったのには驚いた。オフセットあるいはDCドリフトは少し悪化している。

いよいよスピーカーを鳴らしてみた。FE103SOLバスレフである。

これには驚いた。先ほどより音が明瞭で、低音がしっかりしている。別もののアンプになっている。その理由は多分こうである。電流正帰還によりそれまで鳴りっぱなしだったスピーカーコーンのf oの振動がピタリと止む。さらに全帯域に作用するNFBと違ってスピーカーの速度特性に比例して作用する電流正帰還のためにfo付近の制動が増す。何故なら電流正帰還は速度特性に対し負帰還として働くからである。

この辺は解説すると長くなるのでこれ以上述べない。オーディオ理論でも最も理解しにくい領域になっている。理解を深めるには速度型MFBについて経験を積むしかないだろう。