失われた時を求めて (2)

この小説はマルセル・プルーストが幼少の頃から体験した鮮明な記憶を一部設定を変えて小説にしたものであると言う。一生働かずとも食べていける財産を持ち、体は虚弱だったが、文化が咲き誇り、何でも有る都市パリでの上流階級の暮らしが書かれているのだ。文章は明快で少しだけ皮肉が効いている。

小さな田舎町コンブレーでの生活からこの小説の時が流れてゆく。レオニ叔母のお屋敷での出来事が述べられる。大人たちの会話や心理的な駆け引き、特にスワンという近くの別荘に住む来客の事が詳しく書かれている。プルーストはこの来客の事を疎ましく思っていると書いているがいやいやそんな事はないはずで有る。訳文を一部引用する。(吉川一義訳)

《それはスワンの態度にまるで気取りがなく、いつも骨董や画に「うつつを抜かし」、いまや住んでいるのが蒐集品を詰めこんだ古い館で、祖母は訪ねてみたいと言うものの、館のあるオルレアン河岸は、大叔母に言わせると恥ずかしくて住めない界隈だったからである。》

《très simple de façon et ayant toujours eu une «toquade» d’objets anciens et de peinture, il demeurait maintenant dans un vieil hôtel où il entassait ses collections et que ma grand’mère rêvait de visiter, mais qui était situé quai d’Orléans, quartier que ma grand’tante trouvait infamant d’habiter.》