NNNドキュメンタリー 「マルレ 秘密特攻隊 出動せよ。」 (2020)

NNN取材班は第45戦隊特攻兵小島六雄さん(97)を取材する。小島氏ははこう語った。「江田島の幸の浦という所で船舶特攻隊という一人乗りのボートで敵船にぶつかる。」同じく元特攻兵の田島正雄さん(92)はこう語る。「250kgの爆弾を(ボートから)投下して大体4秒で爆発する。」

陸軍は終戦の一年前から独自に少年兵と学徒兵を集めて幸の浦で特攻訓練を行っていた。特攻艇のことを連絡艇と称しマルレ(◯にレ)と呼んでいたのである。舟の構造や作戦については防衛省に残る資料から詳細が判明している。夜間沖に停泊する敵の輸送船めがけて突進し爆雷を投下した後急旋回するという作戦である。100人からなる戦隊が53戦隊編成され一人に一艇が割り当てられていた。海軍の特攻艇「震洋」と統合されルソン島と沖縄で実戦に投入されたが戦果はわずかであった。

話は変わって本ドキュメンタリーのもう一つの主題は広島原爆投下後の救援活動にある。小島氏が閃光とキノコ雲を目撃した45分後、江田島の特攻部隊に命令が下され、部隊は7日間にわたり爆心地などで救援活動に当たった。助かる見込みがある人は運び、そうでない人には水筒の水をあげたという。当然救援部隊は被爆したので、田島氏にも下痢などの急性放射線障害が現れたという。ガンで亡くなった人もいた。

まあこれは最近のドキュメンタリーにしては硬派な部類だが、「ベニヤ舟の特攻兵 8・6広島、陸軍秘密部隊マルレの救援作戦 」という単行本もあるし、ウィキペディアにも詳細に書かれている事象なので、この作品に独自性はあまりない。また特攻の是非についての主張にも乏しいと感じた。戦時国際法に戦闘員を守る特攻禁止の条項が無いのは何故だろう。