フォークナー短編集 (4)

読み進んでゆくと「私」が場面に登場してちゃんと会話していた。

《「クウィンティンに、行って見てきてもらったらどうだい?」と父がいった。「おい、クウィンティン、ナンシーがもうすんだかどうか、行って見ておいで。もう家に帰ってもいいといってやるんだね」 私は台所に行った。ナンシーは冷たいストーブのすぐそばの椅子にすわっていた。彼女は私のほうを見やった。 「おまえが仕事をおえたかどうか、お母ちゃんが見てくるようにっていったんだよ」 「そう」とナンシーはいって、私のほうを見やった。「もうおえたわ」彼女は私のほうを見やった。》

一度目の読みではまったく頭に入ってこなかったようだ。

いくつかのスキャンダルがごく簡単に書いてある。ナンシーの不倫による妊娠、白人に蹴られて歯を折ったこと、留置場での自殺未遂、夫のジーズアスが警察に追われて姿をくらましていること、などである。

本題が登場する。ナンシーがジーズアスの影に怯えて変な行動をとる事と、次男で5歳のジェイソンが口は達者だが臆病者だという事だ。