失われた時を求めて (6)

最近はビゼーを聴くことが多い。プルーストビゼーの息子と同級生で知り合いである。テラークのビゼーとグリークが入った盤は音響効果抜群である。20cmバックロードと100W級のパワーアンプを使って再生すると100Wの意味がわかる。

さてコンブレーに滞在中プルーストは日曜日には両親と教会のミサに出かける。この古い教会のステンドグラスはプルーストを魅了した。いまでもありありとその光景が浮かぶのだと言う。本文を一部引用する。(吉川一義訳)

《はるか高みのひと区域は、小さな長方形の百ほどのステンドグラスに仕切られ、その基調色のブルーは、シャルル六世を楽しませたはずのカード・セットを想わせた。しかし、ひと筋の陽の光が輝いたからか、それとも私の眼差しが移動したときに、消えたり灯ったりするステンドグラスを横切って揺れ動く貴重な炎をさまよわせたからか、もうつぎの瞬間にステンドグラスは、クジャクの尾羽のような千変万化の華麗な輝きをおび、それから、うち震え、波うち、フランボイヤン様式の幻想的な雨となって、暗い岩の丸天井の高みから湿った壁にそって滴り落ちてくるので、祈祷書をたずさえた両親について歩く身廊は、くねくねと鍾乳石のぶらさがる虹色の洞窟のようだった。(略)》

《Il y en avait un qui était un haut compartiment divisé en une centaine de petits vitraux rectangulaires où dominait le bleu, comme un grand jeu de cartes pareil à ceux qui devaient distraire le roi Charles VI; mais soit qu’un rayon eût brillé, soit que mon regard en bougeant eût promené à travers la verrière tour à tour éteinte et rallumée un mouvant et précieux incendie, l’instant d’après elle avait pris l’éclat changeant d’une traîne de paon, puis elle tremblait et ondulait en une pluie flamboyante et fantastique qui dégouttait du haut de la voûte sombre et rocheuse,》