本書は清代蘇州の歳時風俗を記した書である。わざわざ清嘉録と銘打ってあるのは著者のこだわりで、当地である呉の風流を愛する心の表れである。
正月
行春(春牛の巡行)
仕来りとして、立春の一日前に、郡守が僚属を率いて婁門外の柳泉堂に春を迎える。供回り先払いを整え、盛大に旌旗を立て、前には社夥を列ね、春牛を殿(しんがり)とする。見物人は黒山をなし、男も女も争って春牛を手で摸でる。摸でると新しい年に幸運が得られるという。
飛帖 (名刺を投ず)
下僕を遣わして紅神の単刺を親戚や友人の家に投じさせ、自分で年始に行かない者も多い。この場合は答礼も同じ様にする。これを飛帖という。
五月
正面の間には五月中、鍾馗の画像を掛け置き、邪気悪鬼を祓う。
端五
五日は俗に端五と称する。瓶に蜀葵(たちあおい)、石榴、菖蒲、蓬艾(よもぎ)などを挿して供え、婦女は艾の葉、石榴の花を髪に簪す。これを端五景と号ぶ。
八月
月餅
人家では、月餅を贈答しあって、中秋の節物とし、十五日の夜、瓜果とともに月を祭る筵前に供える。
十二月
焼松盆(どんど焼き)
その夜、郷村の農家では、それぞれ門首に松の枝を井げたに組んで、屋根の高さまで積みあげ、火をつけて焚く。煙焰は天を照らし、あかあかとして霞布のようである。これを焼松盆という。
異国の風習であるが読んでいると懐かしいような心地良い気分になる。