湿原のアラブ人 ウィルフレッド・セシジャー (1964)

イートン校、オックスフォード大の出身の貴族で王立地理協会会員であり探検家のウィルフレッド・セシジャーはサウジアラビアクルディスタンを旅した後、とても気に入ったのかイラク南部の湿地帯に長期滞在しこの本を記した。

チグリス川、ユーフラテス川に挟まれたこの一帯はアマダンと呼ばれる人々が昔ながらの生活を営んでいる。イギリス人の著者は領事館の伝手を利用して有力者のもてなしを受けながら湿地帯の奥深く探検する。文章は格調高く、ずるくてお人よしのアラブ人をよく観察し、笑い話のようなエピソードもありそのまま映画の脚本になりそうなくらいの内容である。

イラクではどちらかと言えば虐げられている彼らはシーア派である。第5章の冒頭にさらっとであるがアリーと彼を崇拝するシーア派が出来た経緯が述べてあるが、この様な本質をついた分かり易い解説にお目にかかったのは初めてである。歴史をよく知るにはオックスフォード大で膨大な文献に当たり、各地を踏査するくらいで無いとまだまだ甘いのだわと思った。