GaNアンプの店

仕事に疲れた僕は帰りの電車からある駅に降り立ち友人の経営するコーヒー店に立ち寄った。客は幸い僕一人だった。カウンターの近くには誰かが作ったGaNアンプ(A5eか)とFE103SOL(16Ω)ペリスコープが鎮座ましましている。

TX沿線にこんな店があるなんて知る人ぞ知るである。それに音楽を聴くときはコーヒーが良いというのは言うまでもない。一口飲み干すたびに脳が目覚める感覚を味わうことができる。これが音楽を聴く時の受け皿になるのだ。

まずリクエストしたのはガムラン&ケチャ(NONESUCH)の第一トラック、バリ音楽祭のオープニングパレード(1987年6月13日)である。ざわめきの中から突然金属音が響いてくる。このリアルさはGaNアンプの表現が人間世界最高だと言って良い。

次に井上陽水招待状のないショーの口笛を聴く。何というギターの名手だろうか。グリッサンドっぽい長三度の音程に脳がくらくらする。

コーヒーをまた一口飲み今度はSTICK&STONES(GRP)の終わりの方を数曲聴く。デイブ・グルーシンの弟さんもなかなかの音楽家である。弟さんの事を思うとまた人生の問題が頭をもたげてくるが、この音ならば聴く立場の方でもいいかと思えるのである。兎に角音楽家は人の音楽を聴く時間が無くなる。

などと考えながらもう最後の曲となった。ビートルズホワイトアルバムのGOOD NIGHTにしよう。子供時代の幸せがいっぱい詰まっているような曲だ。いつ聴いてもそう感じる。聴き終わると幸せな気分で店主に礼を述べ帰途についた。