映画 花よりもなほ (2006)

   舞台設定と話の流れは山本周五郎の時代劇を模したものだがこの映画はきれいごとに終始していて心を抉るような物が無い。おそらく現代人の感覚をわざと登場人物に持ち込んでいるからだと思う。自由、平等、博愛、民主主義が見え隠れする時代劇と言うのも珍しい。

  主人公の宗左衛門(岡田准一)は江戸に出て3年の長屋住まいの後ついに仇討ちを果たすがそれは死体を偽装した芝居だった。向かいに住む子連れの未亡人おさえ(宮沢りえ)との色恋もある。偽装がまんまと成功したというのも嘘くさいしハッピーエンドというのもどうかと思う。その裏で四十六士の討ち入りがまんまと成功する。四十七士のパロディだが一人怖気づいて参加しなかった設定だ。その一人は笑い者になる。音楽はルネサンス風の物が流れていた。シェークスピアの喜劇の部類として見てくださいという事かと思う。

   やはり時代劇と言えば理不尽、理不尽、理不尽と来て最後に心が洗われるような何かを見てみたいものだ。例えば森鴎外のじいさんばあさんのように。