りんごの木の下であなたを産もうと決めた 重信房子 (2001)

1971年3月1日家族を捨てベイルートに到着した著者は、緊迫した中東の情勢を肌で感じていた。前年のPFLPパレスチナ解放人民戦線)による革命飛行場作戦、それに対するヨルダン政府による弾圧(ブラックセプテンバー)が起こり、国王親衛隊による右手狩りも行われた。それはゲリラ戦士たちの右腕を1000人分切り落とし国王に捧げると言うものである。著者は40万人いるパレスチナ人の難民キャンプで過ごしながら配給の小麦粉を奪い合い、空爆で死んだ家族を嘆き悲しむパレスチナ人を目撃する。以下は著者の述懐である。

〜少し前まで、日本で過ごしてきた日々を思うと、頭の中で是非を問い、身は喫茶店のソファーに沈めて、マルクスを語るような安易さをはるかに凌駕している現実が、この地にありました。〜

こうして日本赤軍戦士としての彼女の人生が幕を開けたのである。その後の活躍と国際指名手配犯としての生活。アラブ諸国では優遇されていたとはいえ世界情勢の変化による環境の変化もある。育児、恋愛、帰国と彼女の人生が綴られる。

本書には当事者としての立場で考え抜かれた思想が記されている。歴史的名著だろうと思う。