福田正巳著 極北シベリア 岩波新書(1996)

 この本の記事は興味深い事だらけで、とても面白いが読んでいてまた一つ謎が氷解した。このような記述である。

《西シベリアのタイガ地域には、約40%もの沼沢地が分布する。特にオビ河中流域では、タイガの間に大小無数の湖沼と湿原が分布する。この大沼沢地の成立は、最終氷期にオビ河下流をふさぐようにひろがった氷床がかかわっている。厚さ二千メートルもの氷床が、オビ河の出口をふさいでしまったために、中流域に巨大なせき止め湖(専門語で「氷河湖」、「プログレイシャル湖」という)が出現した。》

 極地の空中写真を眺めているとよく出てくる地形だが、これは極端に傾斜が小さいためにこんな風になるのだろうと思っていたが、こちらの方がしっくりくる。随分ダイナミックな仮説である。熱帯の湿地には無い理由もよくわかる。