東洋文庫 長安の春 (1920)

著者の石田幹之助博士は大正五年に東京帝国大学を卒業した東洋史学専攻の俊英でモリソン文庫(後の東洋文庫)創設の中心人物である。本書は小論考集ではあるが大変内容の濃いものとなっている。

長安の春』は唐の都長安が華やかなりし頃、そこに集う人々と多彩に変化する自然を格調高く描写したものでまるでオーケストラ作品のようでもある。

本文の紹介は省略する。

「胡旋舞」小考

唐代の記録に散見される「胡旋舞」について文献からその実体に迫って行く。故地とされるのは中亜ソグドの地の康国(サマルカンド)あたりで、貢物として葡萄と胡旋女が宮廷にもたらされ、市中でもその踊りは見られたという。舞についてはこれを詠った漢詩を引用して動作を推測している。演奏楽器については「通典」に記述があり「鼓笛二、正鼓一、小鼓一、和鼓一、銅鈸二」となっている。楽譜や歌詞は残っていないという。描かれたものがあるかというと、少ない絵と敦煌石窟壁画から類似の物を挙げて論考を締めくくっている。

映画「空海」では市中での胡旋舞が映像化されているがあれはどのようなものだろうか。

この他盛り沢山な論考が掲載されているが省略する。