映画 カジュアリティーズ (1989)

ベトナム戦争の記述は通読するだけでも大変な分量なので、なかなか近づけないでいる。これは1989年の米国制作のシネマである。

ベトナム戦争で奥地の偵察任務に出ていた部隊が犯した戦争犯罪を描いたもので、マイケル・J・フォックスが正義感の強い新兵を演じている。具体的には欲求不満だった隊長が村の娘を拉致して、偵察現場まで連れて行き輪姦したという話である。新兵が一人だけ隊長の命令に逆らったのでトラブルになる。だがそのあと部隊はベトコンを見つけ渓谷での戦闘となる。その際拉致女性は死んでしまうのである。

この新兵は出来事をキャンプに帰って吹聴し、上官に上訴もする。新兵は暗殺されそうになったが、転属させられ帰国する事になる。その後当事者は法廷で裁かれて懲役刑が決定する。

これが正しいかを問う映画であるが、多分正しいとは言っていない。登場人物の様々な考え方が提示され、最終的に新兵の考える正義が実現されたように見える。だが国に戻った彼は、今でも過去の幻影に苦しめられている。まあこれは帰還兵一般に見られるものであるが。

映画はこういう事を言っているのではないだろうか。人を殺すビジネスである戦争においては、正義、贖罪という概念は無意味であり、むしろ上官が言った「それが現実だ。」という辺りが正解に近い。仏教でいう諸法実相である。