映画 ぼくたちの家族 (2014)

  この映画は東京近郊の一家族の危機と再生を描いた作品だが作者の周りで起こったことを脚色して書いたもののようだ。ならばドキュメンタリーの方が心を打つかもしれない。

  書く題材には事欠かないはずである。母親が脳の悪性腫瘍で入院騒ぎになるのだから。だが登場人物は素の一般人なので華もないし問題も抱えている。それを華のある俳優たちが熱演する。グレードダウンである。全編こういう不自然さを感じた。

  相模湖近傍の住宅地の一戸建てに住む初老の夫婦がいる。夫は中小企業の経営者、妻は専業主婦である。自家用車は白いクラウンで1台分の駐車場がある。息子が二人がいて兄は結婚しもうすぐ子供が生まれる。弟は大学生で留年中である。夫が妻に今度ハワイに連れて行こうかと言う。だが妻は最近脳の調子が良くないらしい。両家の食事会でいよいよボロがでた。翌日病院に連れて行く事になる。

  CTスキャンで脳腫瘍が判明した。医師は病状を説明し余命も短いと言う。息子より夫の方が動揺している。翌日入院しグリセオールとステロイドの点滴が始まる。弟がやっと捕まり近くの中華料理店で家族会議をする。その最中母親が錯乱する。病院に駆けつけると今度は物凄いお喋りになる。もう誰が誰だか分からなくなってしまったようだ。本音が次々と出て来るのを皆んなお通夜のように聞いている。

  お金について父親が長男に頼り長男は嫁に拒否されるという構図がある。さらに母親がサラ金に多額の借金があることが発覚する。父親にも6500万の借金がある事も露見する。弟は自己破産しろと言うがそれも難しい。家のローンの保証人が兄という事情もある。この家のおかしいところを嫁は見抜いていたようだ。

  病院からは自宅で看取るか次の病院を探すように言われる。母の言動はますますおかしくなるが麻痺とか頭痛の症状は出ていないようだ。弟の奮闘により6件目でようやく受け入れ先が見つかった。この後は普通に物事が流れて行き術後の母親の元気そうな場面で終わる。意外性のあるセリフや感動的な何かが待っていると言う事も無かった。