大鹿村伝統の歌舞伎を題材にしたコメディである。年に一度村人によって演じられる。村でジビエ料理店を営む善ちゃん(原田芳雄)は主役の景清の口上の稽古に余念がない。そこへ募集広告を見てやってきた女の子のような青年(後にLGBTであると告白)が現れ、駆け落ちした妻が間男と一緒に村に帰ってくる。間男はかつての牧場の共同経営者の治ちゃん(岸辺一徳)である。治ちゃんは認知症になった元妻(大楠道代)を返すと言う。
数日後に公演を控えた村と善ちゃんに降って湧いたような騒動だがこの映画の眼目はもう一つある。元妻の実父役が三國連太郎でバス運転手が佐藤浩市なのである。二人の確執は有名だがストーリー的にとくに絡みは無く二人共淡々と演技しているように見えた。リニア新幹線の話し合いの事で村人が稽古中に揉めるなどの演出もある。
一流の役者を揃えており歌舞伎の場面でのパフォーマンスも立派なものだったがこのオリジナルストーリーは少々時事ネタを盛り込みすぎと思った。美しい自然も映像に収めているが男はつらいよシリーズのような文芸作品的な味わいは少々欠ける。