BSドキュメンタリー 暴かれる王国 サウジアラビア (2016)

  石油大国で西側の同盟国であるサウジアラビアは観光が厳しく制限されており内情を外国人が知ることは少ない。地下組織の活動家ヤセルイスタンブールからリヤドに入り六ヶ月間隠し撮りを実行する。サウジアラビアの恐ろしい実態を暴くためである。

  町にはハルマン国王の肖像画が至る所にあり石油による富は王族が独占している。夫を失った女性の物乞いが目立つ。女性の就業率は2割と言われている。ヤセルが戸外で演奏していると宗教警察がやってきてヤセルの楽器を壊し指の骨を折った。

  宗教警察はショッピングモールを巡回し女性の服装をチェックする。酒ビンを投げ捨てている。学校では子供の頃からワッハーブ派の教義を教えられる。曰く「ユダヤ人は国土を悪用し支配し汚した。」「キリスト教徒は一人残らず死刑にすべきだ。」「シーア派は神の冒涜者で死刑にされて当然。」今はこの教科書は改正されているという。路上でミャンマー人女性が斬首される映像が出てくる。殺人の罪のようだ。ここはイスラム国かと見紛う光景である。

  ブロガーのライフ・バダウィは政府批判のかどで鞭打ち刑を受け刑務所に入れられた。バダウィの家族は弾圧を恐れカナダで生活をしている。 バダウィの妻が人権擁護運動を讃える賞をストラスブールで受賞する。バダウィは2022年釈放予定だが連絡が取れていない。

  イギリスのドキュメンタリー隊がビジネスを装って入国し隠し撮りをする。買い物中の女性が暴行を受けている。女性の人権活動家のルージャイ・ハスルールは女性の車の運転を認めさせる為に自分が車を運転している映像を撮りフェイスブックに上げると言う。だがサウジアラビアに入った途端逮捕され73日間拘束される。2015年女性参政権が認められると地方議会選挙で候補者名簿に登録する。 彼女を取材したドキュメンタリー隊がホテルに戻ると自分らのウェブサイトがハッキングされていた。すぐ国外に脱出する。選挙は行われたが結局ハスルールは候補者名簿から外されていた。

  アラブの春に刺激されたシーア派市民のデモが起こると治安部隊が鎮圧し数十人が殺される。デモに参加した17歳のアリ・ニムルは逮捕される。容疑は煽動罪と反逆罪である。イギリス政府は助命を嘆願するが2015年死刑が確定する。

  サウジアラビアワッハーブ派の教義を広める為に7兆円を投じたと言う。このうちの一部がアメリカ同時多発テロに流れたと言う。これにサウジアラビア高等弁務団が関与したと言う。また実行犯19人のうち15人がサウジアラビア人である。首謀者とされるオサマ・ビン・ラディンサウジアラビアの名家の出身である。

  CIAの資料によるとボスニア・ヘルツェゴビナ救援サウジアラビア高等弁務団が390億円の資金をボスニアイスラム教徒に送りテロに関与したとされている。アルカイダのテロリストであるアル・ハマドの裁判資料における証言ビデオがある。 これによるとボスニア・ヘルツェゴビナアルカイダが将来ヨーロッパ全域に勢力を拡大する拠点であるという。ハマドは内戦終結後の1998年にボスニア自動車爆弾テロを起こした。目的は非イスラム教徒の殺害と内戦の再燃である。政府→慈善団体→アルカイダという資金の流れは確定されている。またイエメンにおけるシーア派民兵組織空爆にもサウジアラビアが関与している。

  政府は国内での取り締まりを強化し2016年1月に反体制派の47人の処刑を実行した。これにはシーア派指導者ニムル師も含まれていた。これに対してもデモが起こる。サウジアラビアはイギリスのドキュメンタリー番組を非難する。ジャーナリストビザ無しでの取材は違法であり我々が行っている事はイスラム法に基づくものであると言う。2016年2月にはサウジアラビア東部で武力衝突が再び起こり死者が2人でた。この映像も隠し撮りにより世界に公開された。