河出書房新社 太平記 山崎正和訳(1370ごろ)

東洋文庫に倣って太平記の現代語訳を読んで見た。東洋文庫3巻分の分量がある。

巻の十一 (前略) 承久からこのかた、北条氏が政権を執って九代、年月はすでに百六十余年に及び、一門は世に栄えて、勢い盛んなあちこちの探題や守護となり、その名を挙げて天下に知られた者はすでに八百人以上になった。ましてや家ごとの郎等は万とも億とも数知れぬほどであったから、たとえ六波羅は容易に政略しえても、筑紫と鎌倉とは十年二十年の歳月を費やしても征討はむつかしいと思われたのに、日本国六十余州、しめし合わせたように同時に戦乱が生じて、わずか四十三日で一族が滅亡したのも、因果の不思議といわねばならない。 (後略)

太平記の資料的価値の評価は様々であるがリアリズムである事は間違いない。北条氏の滅亡の様子が詳しく書かれている。又、菅原道真の生い立ちから最後までが書かれているのも見逃せない。楠木正成の登場のあたりは物語的要素が満載でなかなか心を打つものがある。