映画 若草の萌える頃 (1968)

1960年代のフランス社会に生きる若者の姿を写し取ったような映画である。主人公のアニーは母と叔母とでパリに住んでいる平凡な少女である。父はスペイン内戦で消息不明になっている。ある日ピアノの先生だった叔母が脳卒中で倒れる。ベルナール医師の往診を受け点滴と鎮痛剤の投与がなされた叔母を看病するアニーは、少し精神が不安定になったようだ。母親を罵ったり、ボーイフレンドの誘いにもつれない返事をするのだが、ある夜バスケの試合を観た帰りに夜の街にフラフラと入って行く。

盛り場の店では大学生らがレーシングカーに興じたり、ライブ音楽を楽しんだり、黒人のインテリが毛沢東思想を語ったりとその状況は60年代の東京と類似している。むしろ東京の方がアングラ文化が咲き誇っていたように思われる。アニーはタバコをふかしミルクを飲み、男とダンスもして不良のような振る舞いをするが、本当の不良はあまりいなくて絡んでくるのは大学生やインテリだった。その後アニーは夜の街で危ない目にあうが、結局インテリ大学生のアパートで処女を失い朝帰りするという話だった。

叔母の幻影が出てきてファンタジーのような作りになっているが、半分シリアスなドキュメンタリーのような感じで、まあ日本映画のATGと同じようなものである。