東洋文庫 東方見聞録1 マルコ・ポーロ(1298)

  第1章では小アルメニアから説き始める。小アルメニア王はタルタル人に服属している。海に面した都市ライアスは貿易の中心地でキプロス島の対岸に位置する。トゥルコマニアはセルジュク族の王国でシヴァス、カッパドキアの辺りに位置する。ラバなどを産していた。大アルメニアはエルズルム、トラブゾン、ヴァン湖、アララト山バクー油田を擁する一大王国で銀の産地である。ジョルジア王国はキリスト教の国で黒海カスピ海に挟まれた要害の地にある。生糸を産し物資が豊富である。

  モスール王国はアラビア人とキリスト教徒の国でモスリンという金糸織絹布を産する。バウダック(バクダッド)は世界一の大都市でアッバース朝のカリフがいて莫大な財宝を集めていた。カリフが服属を拒んだためタルタル軍に包囲されバウダックは陥落し完全に破壊され廃墟となった(1258年)。また1225年に起こったというキリスト教徒が山を動かす奇跡について書かれている。トーリス(タブリーズ)は交通の要衝で絹糸、金糸織、宝石が豊富でジェノア人などもやってきていた。キリスト教徒、ペルシア教徒、イスラム教徒が混在する町である。後にイル汗国の首都が置かれたところである。

  広大な国ペルシアはやはりタルタル人に破壊され荒廃した。この国にあるサヴァという町からやってきた東方の三博士、バルタザール、ガスパール、メルキオールの事が書かれている。カラ・アタベリスタンというゾロアスター教の町がある。ペルシアには八王国があり良馬を産しインドに輸出している。ペルシアの住民は凶悪でタルタル人の支配が無ければ商人を襲撃する。イスファハーンの東南にヤスディ(ヤズド)という商業都市がある。さらに東南に行くとケルマンがある。トルコ玉を産し馬具やカーテンを生産する。王国は滅ぼされタルタル人の統治者がいる。 さらに南に下って行くとカマディという暑気の強い町がある。カラウナスという山賊の事が書かれている。さらに傾斜地を南に行き切ると港湾都市コルモス(ホルムズ)に出る。ここは香料、宝石、真珠、絹布、象牙を満載したインド商人がやって来るところである。

  昔「山の老人」が居たと言うムヘレット国の話をする。ハッシシを使い若者を暗殺者に育成するという暗殺教団の話である。天国のような庭園と美女を集めて若者を洗脳する。多くの要人を暗殺したが最後はタルタル人に包囲され滅ぼされた。

  東へ進んで行くと麗しい景色が続きサブルガン(シェベルガーン)に着く。ここはオアシスで瓜が産物で鳥獣も多い。バルク(バルフ)は往年の大都市でバクトリアの首都だったところである。アレクサンダー大王が現地の王女を娶った場所である。さらに東北に行くと無人の地が続くがタイカン(タロカン)という穀物の集散地に到着する。東へ進むとバラシャン(バクダシャーン)という広大な国に出る。アレクサンダー大王の子孫が王位についている。バラス紅玉という高価な宝石を産する。ここから南方に行くとバシャイ(カーフィリスターン)、ケシムール(カシミール)に達する。バラシャンから川に沿って東行するとヴォカン(ワカン渓谷)に至りさらに山岳地帯を行くとバミェル地方(パミール高原)に到達する。四方を山に囲まれた平原で良質な牧地である。

  第二章ではカシュガルに入りタリム盆地を抜け天山回廊を通ってカーンの宮殿がある上都に着くまでが述べられる。第三章はフビライ・カーンの宮廷事情、第四章は雲南への使節行について述べられる。