岩波文庫 ユグルタ戦争 カティリーナの陰謀 (5)

ヌミダエ人の由来についてサルスティウスによる解説がある。かいつまんで言うと船でイベリア半島に渡ってきたペルシア人がアフリカに出て行き、現地人と混血しながら東進し、カルタゴと接するところまで来たのがヌミディア王国なのである。

さてその後どうなったかというと、ユグルタはもう一人の息子のアドヘルバルも軍を送って殺し、後は元老院による審問をどう切り抜けるかが問題となっている状況である。

この問題の処理に執政官カルプルニウスが任命され大軍を率いてアフリカに渡る。ところがいくつかの都市を占領しただけで休戦となり、ユグルタが降伏する事になった。ユグルタが裏で話をつけたのである。

この結果について市民は怒りを沸騰させている。そしてメンミウスがこのような演説をする。

《(略)誰かが言うであろう。「それではどうすればよいというのか?」と。国家を敵に引き渡した連中に懲罰を加えるのだ。ただし武力や暴力によるのではなくーーなぜなら彼らが暴力を蒙ることがというより、暴力を加えることが諸君にふさわしくないからだーー裁判とユグルタ本人の証言によって! もしユグルタが本当に降伏者だというなら、彼は諸君の命令に従うはずである。もし彼がそれを無視するなら、諸君はこの「平和」とか「降伏」というのはいかなるものなのかーーそれによってユグルタは犯罪の処罰を逃れ、しょうすうの権力者に莫大な富をもたらし、国家には損害と不名誉をもたらしたこれらはいかなるものなのか、はっきり判断することになろう。》

実に真っ当な正鵠を射るような演説であり、この後開かれるであろう審問への期待が高まるのである。