フォークナー短編集 (16)

決闘が終わった後のサートリス家の様子が描かれる。牧場周辺の自然や、鳥の鳴き声のような描写がふんだんに出てくる。牧場の奥まったところにある低地の木陰で夜まで休息したベイアードとリンゴーはひっそりと静まり返った家に戻ると叔母のジェニーが待っていた。南部の女性は気働きがよく、しっかりしているように見えるが、感情でボロボロになるというのがこの小説でわかる。まあベイアードもサートリス家の血を引いているだけあって、強情で冷血であるのは間違いないだろう。描写の一部を紹介する。

《ヨタカがすでに鳴きはじめていたが、牧場のなかはまだずいぶんと明るかった。 私たちが家にたどりついたとき、マグノリアの木のなかでモノマネ鳥が鳴いていた。それはもう、眠気をさそうような、夢見心地の夜の歌だった。そしてふたたび、ぬれた砂の上につく踵の縁のような月がのぼっていた。玄関の間には、灯りがたった一つ、ぽつりとついているだけだった。》