映画 ブラックボード (2000)

   イラク軍の爆撃によって教室を失ったイラン人の教師の群れが村を目指して歩く。皆同じような黒板を背負っている。職を求めているらしい。まだ戦闘は続いているのかヘリの音がする。教師らは機銃掃射を恐れ黒板に泥を塗りカムフラージュする。村外れに老人がいて息子の手紙を読んでくれという。教師Aはイラン語でもクルド語でも無いこの手紙の文を読む事ができなかったが、息子からの手紙と知ると定型文を推測して読んだように話して聞かせる。 

   村の子供達が山道を荷物を担いで歩いている。物資を運ぶ仕事だが本来なら大人がロバを使ってやるはずの仕事だ。大人たちは兵役に取られ死んでいるのだろうか。教師Bはこの少年たちに付き添って村へ進んで行く。密輸物資なのでイラク軍から攻撃を受ける。少年の一人と仲良くなり名前の書き方を教える。放牧中の羊の群れが現れる。産業で成り立っているのはこれくらいのようだ。兵士が立ちふさがる中、少年たちは羊に紛れて通り抜ける。
 
   クルド人の集団がイランからイラク側へ移動している。戦争終結が近いのでハラブチェという村に戻ろうとしているのだ。腎臓を患った老人とその娘がいる。教師Aは国境への案内役を引き受けるが水とパン欲しさにこの未亡人の女と結婚する。結婚したのはいいがうまくコミュニケーションが取れない。女はイラクの毒ガス攻撃を受けて精神が正常では無いのだ。教師Aが去ろうとすると女が追いかけ謎のような言葉を言う。愛しているのは息子だけということか。でも去られるのは嫌なようだ。どちら側なのか部隊が攻撃してくる。何人かが撃たれるが村人はなおも進む。教師Aが案内した国境は岩だらけでハラブチェと違うところらしいがクルド人達は国境を越えていった。教師Aはクルミ50個を受け取ってイラン側へ戻って行く。女と村で暮らすのは嫌になったようだ。 
 
     ちょっと皮肉の効いたストーリーだったがイランの山岳地帯の風景が堪能できた。雨が少ないのでわずかな草と灌木を頼りに羊を飼う事によって生きてゆくのだろう。パミール高原の人達とよく似ている。そういえばパミール高原の人達は争いが嫌でイランから逃れてきたのだという説明を聞いた事がある。