映画 神々と男たち (2010)

  ある修道院の早朝の祈祷、学課の映像が映し出されるが程なく現代の話であることがわかる。修道士は村に溶け込んでおり畑仕事、墓地の修理、ハチミツの販売、これが一番重要なのだが無料の医療奉仕を行っている。担当は老医師のリュックである。村人に教えているのはキリスト教イスラム教をミックスしたような聖歌であり院長のクリスチャンが工夫したもののようだ。修道院は自給自足でやっており財産はなくわずかな薬品ストックがあるだけである。


  ある日村の近くでクロアチア人労働者が武装勢力に殺害される事件が起こる。キリスト教徒だけを狙ったテロである。ここは何処かというと内戦中のアルジェリアなのである。アルジェの南90kmのアトラス山脈の麓にあるトラピスト会の修道院が舞台である。武装勢力が迫ってくる状況で院長のクリスチャンは決断を迫られる。だがクリスチャンはみんなの意見を聞いた後結論を先延ばしにする。各自の意見がまたバラバラで本国に帰る、残る、わからない、隠れると言う。みんなそれなりの人生経験を積んでいる人達だ。

  結局村人を見捨てることができず残る道を選んだ面々はある夜最後の晩餐を微笑みながら摂るのだが明け方に武装勢力に急襲され二名は逃れたが七名が連れて行かれる。七名は二ヶ月ほど人質にされ捕虜の交換交渉に使われたが結局山中で斬首された。イスラム武装勢力の発表では1996年5月21日の事である。ティビリヌの修道士殺害事件として知られている。

  風光明媚な山脈の麓に広がる農村地帯、フランス民家風の質素な修道院、聖歌の歌声、なかなかリアルに構成されている。軍のヘリと空爆後の街の映像もちょっと出てくる。真実を追求し再現した素晴らしい作品だ。