失われた時を求めて (52)

シャルリュス氏はプルーストのいくつかの質問に答えると辻馬車にとび乗り去って行った。彼の回答を示す。以下引用文。(吉川一義訳)

アルジャンクール外交官について
《「あのアルジャンクールは、生まれは良くても育ちが悪く、外交官としては平々凡々、夫としては忌むべき浮気者、芝居に出てくるようなペテン師で、真に偉大なものを理解する力はなく、それをぶちこわすことにかけてはきわめて有能な男だ。」》

ゲルマント公爵夫人について
《「女というものは、いや、たいがいの男もそうだが、私がいわんとしたようなことはなにもわかっておらん。義姉は、バルザックの小説に出てくるような女性が政治を左右していた時代に自分がまだ生きていると想いこんでいるおめでたい女です。(略)」》

ヴィルパリジ家については、消滅した貴族名を拝借しただけの笑止千万の偽貴族、本物のヴィルパリジ家のあらゆる肖像画を集めて展示している存在であると語っている。

プルーストはこれらの回答にかなりの感銘を受けたようだ。