東洋文庫 朝鮮歳時記 (1911)

本文を一部紹介する。

《正月

元日

新歳問安
議政大臣は百官をひきいて宮中に参内し、国王に新歳の問安(あいさつ)をなし、箋文(国王にささげる賀表)と表裏(手織りの絹布や綿布)を献上し、正殿の庭で朝賀礼をおこなう。 八道の観察使、兵使および水使、各州の牧使たちも、国王に箋文と方物(地方特産品)を進上し、各州、府、郡、県の戸長吏もまた、みんなそろって班列に参加する。

(略)

歳粧・歳拝
男女の年少者たちは、そろって新しい晴着をよそおうのであるが、これを歳粧という。それから親戚の長老たちに年賀まわりをすることを歳拝という。

歳饌・歳酒
元日に時食(季節料理)をもって訪問客をもてなすが、これを歳饌(セチャン)といい、その酒を歳酒(セジュ)という。

(略) 姻戚や親戚の間で婦女たちは、たがいに着飾った召使いの少女を送り、新年の問安をかわすが、これを問安婢という。

桃の節句端午の節句は無い。

五月の行事に相撲がある。

角力
青壮年や少年たちは、端午の日にソウル南山の倭場や、北岳の神武門にあつまって、角力戯をおこない、勝負を賭ける。 その方法は、両方がたがいに向かいあってしゃがみ、それぞれ右手をもって相手の腰の紐をつかみ、左手をもって相手の右股にかけた紐をつかむ。両方が一時に起ちあがりながら、相手を持ちあげて組み伏す。倒れて組み伏された者が負けとなる。》

《七月

七夕
七月七日、家々では衣装を陽にさらして虫干しする。これは古くからの風俗である。 》

中国、日本と比べて文化、風俗の違いがかなりあるようだ。本書には『東国歳時記』、『洌陽歳時記』、『京都雑志』の日本語訳が収められており、今回は『東国歳時記』から紹介した。